カテゴリ:日本経済
古い記事ですけど、前回の「国の借金」記事の流れで投稿します。
2016.5.24日本経済新聞 財務省は24日、2015年末時点の日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を引いた対外純資産残高が前年末に比べて6.6%減の339兆2630億円だったと発表した。 減少に転じるのは5年ぶり。 海外から日本への投資が増え、負債が膨らんだ。 対ユーロなどでの円高による外貨建て資産の評価額の目減りも影響した。 麻生太郎財務相が同日の閣議で報告した。 15年末の対外資産残高と対外負債残高はともに増え、比較可能な1996年以降で過去最高だった。 純資産残高は負債の増えた額が資産の増加額を上回ったため差し引きでは減ったが、過去2番目の高水準を維持し、25年連続で世界1位となった。 15年末の負債残高は609兆4660億円で、前年末と比べて5.3%増えた。 増加は6年連続。 増加額の約6割を占めたのは日本株などの価格の上昇だった。 資産残高は0.7%増の948兆7290億円だった。 7年連続で増えた。 対ユーロなどでの円高による外貨建て資産の円換算額の目減りや、外国証券の価格下落などがあったが、国内企業による旺盛な海外投資が下支えした。 財務省によると、15年末の主要国・地域の純資産残高(非公表の中東の一部の国などを除く)はドイツが195兆2360億円で日本に次いで多かった。 3位は中国で192兆3726億円だった。 対外純資産は国の経済の成熟度合いを示す指標に使われる。 日本は11~14年に貿易収支が赤字を記録する一方、海外からの配当金など所得収支は黒字が定着し、現在は「成熟債権国」に分類されることが多い。 将来、貿易赤字が拡大するようだと対外純資産も縮小し「債権取り崩し国」に近づくとの見方もある。 マスコミの多くは、「国の借金」とやらは喜々として報じますが、上っ面しか報じないため、実態に関する情報は、自ら理論武装するしかありません。 前回投稿した通り、「国の借金」とやらの貸主は日本銀行と機関投資家。 対外的な資産と負債の差額である対外純資産は、金額として世界一なのです。 記事中の文言で評価できるのは、「15年末の対外資産残高と対外負債残高はともに増え、比較可能な1996年以降で過去最高だった」の箇所です。 資産残高も債務残高も過去最高ということは、それだけ海外との取引が活性化しているということです。 「国際収支の発展段階説」というものがあるらしく、 経済発展に応じて、国内貯蓄と投資のバランスが変化し、長期的に国際収支構造が変化していくという考え。 経済発展に伴って、 (1)未成熟な債務国 (2)成熟した債務国 (3)債務返済国 (4)未成熟な債権国 (5)成熟した債権国 (6)債権取り崩し国 という順で発展していくとされるそうです。 (1)未成熟な債務国の段階では、経済発展の初期で国内貯蓄が不十分なため、投資のために海外からの資本流入が必要で、経常収支は赤字となる。 (2)成熟した債務国の段階では、国内産業の成長から貿易収支は黒字となるが、それまでの債務の返済のため所得収支は赤字が続き、経常収支は赤字が続く。 (3)債務返済国の段階では、貿易収支黒字が拡大し、所得収支の赤字を上回ることで、経常収支は黒字に転じる。 (4)未成熟な債権国の段階では、経常収支の黒字が続き、債務の返済が進み債権国となり、所得収支が黒字に。 (5)成熟した債権国の段階では、高齢化や賃金の上昇などから国際競争力が低下し貿易収支は赤字になるが、増大した対外資産からの収入で所得収支の黒字が拡大するため、経常収支は黒字を維持する。 (6)債権取り崩し国の段階では、貿易収支の赤字が拡大し、所得収支の黒字を上回ることによって、経常収支は赤字となり、対外資産は減少へ向かう。このように経済発展に応じて、経常収支は赤字→黒字→赤字と推移していく。 いまの日本はどうやら、「未成熟な債権国」から「成熟した債権国」への移行段階と推測されます。 一般社団法人日本貿易会の調査によると(一部引用します) 1.商品別貿易の見通し(通関ベース) ・ 2016年度 ~ 資源価格下落などを背景に、6年ぶりの貿易黒字に転化 輸出総額は、前年度比6.8%減の69兆1,050億円となる。 内訳は、輸出数量は同0.2%増、輸出価格は同7.0%下落。 世界経済の減速により数量ベースでは微増にとどまる一方、大幅な円高進行により幅広い品目 で価格が下落するため、輸出総額は 2 年連続の減少となる。 輸入総額は、前年度比13.0%減の 65 兆4,110 億円となる。 内訳は、輸入数量は同 0.2%減、輸入価格は同12.8%下落。 資源価格の下落と円高の影響で幅広い品目で価格が大きく下落。輸入総額は3年連続の減少。 輸出より輸入の下落幅が大きく、貿易黒字に転化。(引用ここまで) 2016年度は、輸入も輸出も減少していますが、6年ぶりの貿易黒字ということで、まだまだ日本の国際競争力は健在であると言えます。 なので、上記「国際収支の発展段階説」で、「成熟した債権国」には達していないと推測されます。 なので、いずれは「債権取り崩し国」になる可能性は高いですが、まだその段階ではないと思われます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年02月12日 00時00分32秒
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