中国でEV電池 日韓勢が増産
日中韓の電池メーカーの中国市場での競争が激しさを増している。パナソニックは2019年内にも車載電池の生産能力を最大8割増やす。韓国のLG化学も20年をめどに南京で新工場を建設する。中国政府が電気自動車(EV)など新エネルギー車(NEV)への規制を緩和し外資を取り込みながら普及を促す政策に転換したのを受け、各メーカーが攻勢をかける。各社が増産するのはリチウムイオン電池と呼ぶ電池で、EVなど電動車の中核部品だ。これまで中国では政府が認めたメーカーの電池を搭載しなければ自動車メーカーは補助金を得られなかった。しかし、多くの中国の自動車メーカーは高品質の日韓の電池を求めるなど、制度が実質的に形骸化していた。 さらに中国政府が環境問題の高まりを受けて、19年から海外メーカーによるEVの新会社や工場の設立をしやすくしたことで、日韓製の電池の引き合いはさらに強まりそうだ。EVを含めたNEVの販売台数は1~10月に72万6000台と前年同期比で91%増えた。NEVは現在、新車販売台数の3%強にすぎないが、みずほ銀行の調べでは30年には3割を超える見通しだ。 NEVの普及をにらみ、パナソニックは中国で唯一、車載電池を生産する大連工場(遼寧省)で2ラインを増やし、生産能力を4~8割増やす。投資額は数百億円規模で、現状の生産能力は5ギガ(ギガは10億)ワット時弱とみられる。新ラインは19年夏の稼働を目指す。現在は2棟の建屋があるが、さらに2棟分に相当する土地を確保している。受注拡大にあわせ生産能力引き上げも検討する。 増産するのは「角形電池」と呼ばれる電池で、EVをはじめハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)向けに使われる。米EV大手のテスラ向けに供給する円筒形電池とは異なるタイプだ。 韓国勢も再び投資攻勢に転じる。LG化学は20年までに南京に新工場を建設する計画で、能力規模はEV50万台分とみられる。そのほか、中国・華友コバルトとの合弁会社を設立、電池の主要部材である正極材の生産を計画する。サムスンSDIは江蘇省・無錫で車載電池の新工場建設を検討中だ。 これまで中国の電池メーカーは補助金政策を追い風に台頭してきたが、積極投資を続けて日韓勢に対抗する。車載用電池で世界シェア首位の寧徳時代新能源科技(CATL)は20年までに年産能力を17年比で4倍強の50ギガワット時に拡大する計画。比亜迪(BYD)は20年までに3000億円超を投じ、年産能力を60ギガワット時に引き上げる。 グローバルでのメーカー同士の競争はリチウムイオン電池の主要部材にも広がる。中国の星源材質科技(セニア)はセパレーターと呼ばれる部材を増産する。50億元(約800億円)を投じて、常州の新工場で一部生産を始めた。20年に完成する予定で、年産能力は現在の2億平方メートルから4倍に高まる。世界首位の旭化成や東レも増産計画を打ち出している。 19年にはNEV規制が施行される。設備投資に伴うある程度のリスクを取りつつ、次世代電池の開発や供給能力拡大の投資を続けることが勝ち残りの条件になる。 出典:日本経済新聞社