リチウムイオン電池の父はかく語りき
2019年のノーベル化学賞で栄冠を手にした旭化成名誉フェローの吉野彰氏(71)。もともと電池の門外漢だったが、執着心と柔らかアタマでリチウムイオン電池を生み出した。AI、日本の産業界など研究者として今何を思うのか。受賞後の金言を写真とともに振り返る。「AIは人間以上でも以下でもない。自分で賢くなっていくという人間の良い部分は引き継ぐが、年齢は追い越せない」「人間が生まれて社会人になるまで20年。AIも賢くさせるのに子どもの教育投資と一緒で相当な時間とお金がかかる。過度な期待も拒否感も持ってはいけない」「研究者はアタマが柔らかくないといけない。真逆の最後まであきらめない執着心も必要。剛と柔のバランスは難しいが『何とかなるわな』という気持ちが大切」「研究者でも独創的なことを発揮する人もいれば、手先が器用な人もいる。同じ実験でも手先が器用な人がやればうまくいくことも。個性や得意な部分を引き出してあげることが大事」「スマートフォン、電池など日本製はほとんど衰退しているが、なかの部品や材料は圧倒的に日本が優位性を保っている。一生懸命やると同時に、お客さんの立場に立って材料を評価することを強化していくべきだ」「非常に危惧している。無人自動運転の技術など大きな構造変革が起きていて、うまく立ち回ると飛躍するが、できなかったら大きなダメージを受ける。IT革命でも同じパターンがあり、会社や産業そのものがなくなったこともあった」「比較的うまく進んでいるドイツでは産業界が大学研究に予算とテーマを下ろし、責任を持つ。だが、日本は1つの研究分野に群雄割拠して大学を引っ張る存在がいない。リーダーシップを発揮できていないから大学が何をやるべきか定まっていない」「ロマンがあって面白いのは地球の歴史。地学や宇宙の成り立ち、生命の誕生と進化、最後どうなるのか。過去の歴史から未来が見えてくる。これは研究開発にとっても重要だ」出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50884810R11C19A0000000/