携帯3社「菅氏優勢」警戒
菅義偉官房長官が自民党総裁選への出馬表明会見で、携帯電話料金について「事業者間で競争が働く仕組みをさらに徹底していきたい」と述べ、一段の値下げに意欲を示した。菅氏の発言に動揺したのが、これまでも値下げを求められてきた携帯大手3社だ。「こんな所で言わないで欲しい」。2日、会見をテレビで見たある大手幹部は唖然(あぜん)とした。NTTドコモ幹部は「利益率2割が高いとも言っていたが、そういう会社は他にもある」と語気を強める。KDDI幹部も「格安スマホのUQモバイルと統合し、料金は常に意識しているのに……」と困惑を隠せない。「値下げで5Gの投資に必要な体力が奪われる」(ソフトバンク幹部)携帯3社が菅氏の発言を警戒するのは、菅氏が総理になれば、値下げの包囲網から逃れられなくなるからだ。菅氏は通信行政への関わりが深い。総務相時代には総務省の谷脇康彦氏(現総務審議官)と業界の競争を促した。2018年夏には「日本の携帯料金は4割程度下げる余地がある」と発言し、官製値下げに火を付けた。3社は菅氏の発言を受け、18年以降、割安な新料金プランを導入した。19年10月から始まった通信料金と端末代金を分離するルールも適用した。菅氏には3社の値下げが不十分と映る。4月に「第4のケータイ」として楽天が参入したものの、3社の対抗値下げの動きは鈍かった。総務省によると世界6都市の標準的な携帯料金プランは東京(ドコモ)がニューヨークに次ぎ2番目に高い。日本の大手3社は「値下げに取り組む」と口をそろえるが、実際は一段の値下げに消極的だ。しかし、「いずれ値下げ要求に従わざるを得ない」との見方は根強い。菅氏の総裁選出馬の意向が報じられた8月31日、ドコモの株価は3%安となり、KDDI(5%安)、ソフトバンク(3%安)も下落した。特に携帯事業に依存するドコモは「値下げによる業績への悪影響が相対的に大きい」(外国証券)。「菅氏の総理就任は通信大手にとって最悪のシナリオ」(国内証券)との見方もある。一方、総務省の行政指導もあり立ち上げが順風でなかった楽天。菅氏の総裁選出馬は「当然ポジティブ」(幹部)と期待する。3社の寡占を崩す政策が打ち出されれば、楽天の顧客増につながる。8月31日の楽天株は3%上昇し、逆行高になった。菅氏と三木谷浩史会長兼社長は「値下げが消費の活性化につながるという認識で一致している」出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63391080T00C20A9I00000/