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2006.11.28
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父は  わたしが  5才くらいのころ

オイルショックで 自分が立ち上げた事業に 失敗

精神分裂病に  なった

 

わたしは 父親の愛情を 知らない

 

父が 母に暴力を振るった瞬間 わたしは そこにいた

こわかった

妹とわたしを残し 母は 幼い弟を連れて出ていった

さみしかった

 

父は 入退院を くり返した

外泊許可が出て 父がうちに帰ってくると とてもうれしかった

でも また電車で 病院へ戻ってしまうとき

子供ながらに さみしかったし 父がとても 小さく見えた

 

父の病気は いまだに 治らない

精神病というのは 本人に 病識がなく

薬物療法が むずかしい

入院しているときは 監視下で 飲まされるらしいが

今さら 父に クスリを飲ませることは 不可能

 

今の父は 自分以外の人間に まったく無関心

会話も 成り立たない

わたしが 実家へ行っても 「お父さん こんにちは。」 と言うと

「こんにちは。」 と言うだけ

それ以上の言葉は 期待など してはいけない

 

わたしは 父に 心配というものを してもらったことがない

 

100点満点をとっても 高校に合格しても 結婚したときも 

父からの言葉は なにひとつ なかった

 

わずか30才前半で 病気によって 人生を めちゃくちゃにされた父を

わたしは 子供のころから ずっと 不憫に思っていた

病気を ひどく恨んだ

こっそりひとりで 何度も 何度も 泣いてきた

たぶん 父への思いが いちばんあるのは 長女のわたしだった

 

子供のころ 母に 離婚をすすめたことが 何度もある

母は うっすら笑うだけだった

今になって思えば 母に 父を見捨てるなど

できなかったんだと 痛いほどわかる

 

母の苦労は 並大抵のものでは なかった

なのに 不思議と 母の顔は 仏さまのように やさしい

苦労の 「く」 の字も ないような顔

 

母は言う

この前 お父さんが 体調を崩して 寝ていたから

ひとりで ごはんを食べたら ちっとも おいしくなかったの。

ただ黙って もくもくと ごはんを食べる お父さんだけど

そばにいるのと いないのとでは 違うのね…。

あんなお父さんでも 存在って 大きいのね。」

 

わたしには 母の気持ちが わかる

 

父は 人生で 負けてしまったけれど

愛情深い母に支えられ しあわせな人だと 思う

そう思えるようになるまでは ずいぶん 時間がかかった






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最終更新日  2006.11.29 01:37:26
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