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カテゴリ:本
章ごとに違う人物の視点で物語が進むので、 読んでるうちに少し混乱してしまったけど、 すごく面白かったです。 物語に引き込まれて、一気に読んでしまいました。 読み進めるうちに、 どこかで読んだ事がある話だな・・・と思いましたが、 参考文献に、佐野真一「東電OL殺人事件」と書いてあったので、 納得しました。 佐野真一の「東電OL殺人事件」は、 東京電力のエリートOLが、退社後に娼婦になって売春を続け、 何者かに殺されてしまった事件を描いたノンフィクションですが、 この「グロテスク」は、東電OL殺人事件を参考にしつつ、 もっと複雑な人間関係を描いた小説でした。 女性の作家の作品だからか、女性の心理がすごくリアルで、 嫌な気分になったりしつつも、共感する部分が多かったです。 特にノンフィクションを読んだ時には、 どうしてこの人は娼婦になったんだろう?と不思議に思っていましたが、 この小説を最後まで読んだら、 もしかしたら東電OLもそういう心境だったのかも・・・と思えたし。 作中に「Q学園」という、 初等部から大学までエスカレータ式に進学できる名門校が出てきます。 その学校の生徒達の間で尊ばれているのは学力や偏差値ではなく、 家柄や経済力、センスの良さや容姿の美しさでした。 初等部や中等部から入った内部生は垢抜けていて自由で、 高等部から入った外部生は、そんな雰囲気に溶け込もうと頑張りますが、 内部生はそれをバカにしています。 後に娼婦になって殺されてしまう女性は、 必死で勉強をして名門であるQ女子高に入学しました。 自分の学力にすごく自信を持っていたけど、 高校に入ってみたら学力はパッとしないし、 見た目がとてもダサかったので、それがコンプレックスになって、 綺麗になろうとするあまり、拒食症になってしまいます・・・。 私もエスカレーター式の女子校だったので、 女同士の見栄の張り合いや家庭の経済力の見せつけ方、 内部生と外部生の関係の描写が、 自分の学生時代の事かと思う程リアルでした。 この物語に出てくる女性達は、 そういう若い頃の価値観を捨てられず、 それにしがみついた為に身を滅ぼしたんだと思います。 等身大の自分を認めるのって難しいのかな。 「新潮45」のノンフィクションも興味深くて全部集めてしまいました。 読み終わるとゾッとします。 中にはニュース等で取り上げられたのを覚えている事件もありましたが、 東電OLの事件はそんなに古くないのに(平成9年の事だそうです)、 本を読むまで全く知りませんでした。 実際どんな風に報道されていたのかが気になります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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