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今日は友達と是枝裕和監督の映画『Nobody Knows(邦題:誰も知らない)』を見に行ってきました。彼の作品は『幻の光』をこれまたこっちでビデオで見たことがあり、映像が美しいことが印象に残る作品でした。この映画も主人公の心象を映像の明暗の中に巧みに表現していて、せわしない都会の喧騒の中で起きている悲痛で荒んだ現実を描いているにも関わらず、何か切なくも懐かしい美しさが心に残りました。
ストーリーは、別々の父親を持つ4人の子供を抱えた母子家庭で、子供達は学校にも行かせてもらえず、家に閉じ込めたっきり。ある日、母親はいくらかのお金を残して男に付いて行って失踪。置き去りにされた子供達は不安や絶望の中でもわずかな生きる糧を見出し、生きていく。本当に都会のどこかで、誰も知らないところで普通に起こっているようなストーリー。以前、別居中だかなんだかの母親が二人の子供を家に置き去りにして浮気旅行、帰ってきたら子供は餓死していたっていうニュースを思い出しました。と思ったら、この『誰も知らない』も、実話に基づくストーリーで、88年に起こった巣鴨子供置き去り事件が題材だとか。実際の事件は、映画よりももっと屈折して陰惨でとても映像化できなそうな勢いです。ストーリーも実話よりかなり優しく美しく訂正されています。 なんかバブル世代以降、ここまでとは言わずとも責任感のない母親が増えているような。。。特に最近の責任感無く異性関係にだらしのない若い子達を見ると行く先心配になります。昔から責任感のない父親ってのは多かったと思うんですが、今は男女平等で母親も責任放棄権を主張しているかのようです。残された子供はたまったもんじゃありません。 あ、もちろん男は無責任でいい、って言ってるわけじゃないですよ。どっちも平等に責任があります。 その責任放棄の母親はYOUが演じているんですが、劇中の台詞で長男の「お母さん、ワガママだよ」という言葉に対して、YOUが「もともと一番ワガママなのは誰よ?あんたのお父さんでしょ?なんでママだけ我慢しなくちゃいけないの?ママが幸せになっちゃいけないの?」と、長男に逆ギレします。なんだかこのシーンに現代の無責任奔放母親の心理が凝縮されていたように思えました。彼女には悪気はないんですけど、ただ考え方が子供過ぎて、母親として未熟過ぎるだけなんですよね。この映画の中でもYOUは憎めないキャラクターとして描かれているんですね。しかし、この背後に残された子供達はあまりに無防備で、自立して生きるにはあまりに弱すぎるんですよね。誰も悪気があってやってるわけじゃない。真のところは誰も責められないから、哀しく切ない現実なんですね。 もう一つの見方に、見て見ぬフリをしてきた周囲の人々もいます。異常に気が付いたはずの大家さん、事情を知っていたコンビニのバイト。誰も知らなかったのではなく、実はみんなが知っていたんですね。でも決して世間が無関心で冷酷だったわけではないんです。彼らは子供達を心配しながらも、他人のプライバシー領域に踏み込む勇気がなかっただけなんです。これもまた、誰も責めることはできない、事件が起こった後で自らを責めるしかない、悲しい現実なんですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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