小さなハルクの願い事
小さなハルクの願い事 ハルクは5歳になったばかりの男の子。 何時もひとりぽっちで裏山にのぼり木や草や小川に話しかけていた。 「 今日は何して遊ぼうか ? 」 「 ん・・・・こんなにいい天気なのに雨降るわけ無いよ! 」 「 わかった ! わかったってば 帰るね 明日も雨なの じゃ雨やんだら来るね。 」 家に帰るなり 「 ママァ~ 雨降るよ お洗濯物いれるね 」 「 あらあら ハルクありがとう もう乾いているころね 」 「 ママ 明日も雨だよ お買い物いこうよ 」 「 ほんと ? ハルクのお天気占いよく当たるものね 」 ハルクの狙いは歩いて5分の角のスーパーにあるミントチョコアイスである。 ミントチョコアイスを手にしたハルクは家に着くなり 「 いただきま~~す 」 「 手を洗ってから食べなさいね 」 そんなやり取りをしている間もなく雨はザアザア降り始め 次の日も次の日も雨は降り続きやむ気配がなかった。 ハルクは窓辺に1日中腰掛 裏山に向かってつぶやいた。 「 僕ね・・・・お友達がほしい 雨の日にも遊べるお友達 うぅん 君達も大好きだよ だけどね 雨の日は遊べないでしょ 」 ハルクが窓辺でうとうとしていると 窓の下から男の子の声がした 「 ハルク 遊ぼうよ ! セイヤだよ ! 」 「 えっ ! セイヤ ? 」 ハルクは夢だと思った。 セイヤはハルクが裏山の大木につけた名前である。 「 ママ ドア開けてよ お友達のセイヤが来た 」 ドアを開けるとびしょ濡れのハルクくらいの男の子が立っていた 「 まぁ ビショビショじゃない ハルクお洋服もってきなさい 着替えないと風邪引くわ 」 てきぱきと着替えさせると暖かいミルクをハルクとセイヤに差し出した。 「 どこの子なの 会った事ないわよね 」 「 えっ 何回も会ってるよママ 裏山にずっと住んでるじゃない 先週も裏山で昼食したでしょ 」 「 裏山には何回も行ってるけど あそこに家あった ? 」 不思議そうに首をかしげる母親をよそに 2人ははしゃぎながらベットに潜り込んだ。 「 セイヤ 良く家がわかったね 」 「 分かるさ 毎日ハルク見てるもん 」 2人は時間を忘れて話し込んだ。 それから 雨の降る日はセイヤが必ず現れ 雨の降らない日は ハルクが裏山に向かった。 そんなある日 2人は何時ものようにゲームに熱中していた。 ひどい雨と雷が鳴り響き バリバリ !!! ドカーーーン 「 何処かに雷落ちたわね 」 と 母の声 いきなり セイヤが叫んだ 「 あぁ~~ハルクさようなら 家が・・・僕の家が・・・」 ゆらゆらと雨の中に消えていったセイヤは 2度とハルクの前に現れることはなかった。 雨は何日も降り続き ハルクは裏山の大木を部屋の窓から見続けた。 雨があがった朝早くに 大木の前に泣き崩れるハルクがいた 大木は真ん中から真っ二つに割れ 片方はかろうじて立っていた。 後ろから大人の声がした。 「 ああ これはダメだね 明日伐採しよう 」 「 おじさんダメだよ ! セイヤをたすけて ! たすけてよ・・・ 」 「 ぼうや足元みてごらん 大きいのと小さいのと2本の苗木がでてるでしょ この木は死んでないよ 大きいのはここに残して 小さいのは坊やにあげるから家で植えてもらいな 」 そう言うと小さい苗木を手渡した。 一目散に家に帰ったハルクは窓から良く見える場所に苗木を植えた。 セイヤが嬉しそうに微笑んでるようだった。 またねぇ~~~