21世紀に適した絵の楽しみ方
金龍の構想画より「絵をどうやって楽しめばいいの?」「絵はどうやって見ればいいの?」という声を受けて、今日は、絵の楽しみ方について書きます。絵には、大きく分けて、2つの楽しさがあります。絵の物語を知る楽しさ。この中に、依頼者や作者の意図を知ることも含まれます。この視点だけだと、絵には一つの正解がある、という見方になります。もう一つは、絵の背景や物語を気にせずに、自由に想像する楽しさ。この見方になると、絵には無数の正解がある、という見方になります。私は、両方の楽しさを味わってもらいたいと思っています。美学の専門用語で言うと、これは、解釈に当たります。解釈には二通りある、のです。歴史的には、絵の物語を知る解釈の仕方が、一般的でした。宗教画や歴史画などは、絵を通じて聖書や仏教を学んだり、歴史的な事実を学んだりするために描かれていたからです。しかし、絵が伝えているのは、それだけではありません。時代や民族や作り手の個性も自然に滲み出るものです。いろんな時代や地域の絵を見比べたら、すぐそのことに気がつきます。だから、つくり手の意図を超えて、さまざまに解釈することも、間違いではないのです。実際、歴史が積み重なって、同じ時代でもいろんな地域に違いがあるのがわかってきた19世紀になって、自由な解釈の仕方も認められるようになりました。そして、21世紀になって、自由な解釈の重要性が、クローズアップされてきています。今の時代は、Volatility(不安定)Uncertainty(不確実)Complexity(複雑)Ambiguity(曖昧)VUCAになっているといわれています。一つの事実に対して、一つの見方だけ、一つの考え方だけでは、対応しきれない時代だ、と言われているのです。実際、コロナによって、今までの常識の多くが、新しい常識に置き換えられたり、私たちは常に、いろんな変化に柔軟に対応していく必要があります。だから、いろんな解釈を楽しむ絵の見方は、時代にマッチしている、と言うこともできるでしょう。