私は幼い頃に家族揃って遊びに行ったという記憶よりも、母と兄弟と遊びに行った記憶の方がダントツに多いです。
父は、朝起きて「行ってらっしゃい」を言うだけのことが殆どでした。
父は「仕事人間@営業マン」だったからです。
日曜日もお客さんのところの現場が働いているなら、父も一緒に様子見に行っていました。(そういう名目での浮気もあったかもしれませんが)
ある程度大きくなり、父の勤務先の近くに引越すと自宅にまで土日、時間を問わずに取引先からの電話が多くなり、出かけていくことがさらに増えました。
バブルがはじけるまでは。
バブルがはじけ、しばらくしてから土日の電話も減り、父が日曜日に家を過ごすことも増えました。
ただ、そのときには私はもう大きくなりすぎていました。
家族と過ごすよりも、友人と遊んだり、バイトに行く時間の方が増えていました。
父は「日曜の夜位、家族みんなでご飯を食べようと思わないのか!」と、私を何度も叱りましたが、その度に「自分は私が小さい頃に、1度だって約束を守ったことないくせに」と反発していました。(実際、誕生日もクリスマスも父抜きでした)
あ、ここで言っておきますが私はいくら父に反発しても、父を尊敬はしていました。
父は私達家族を養うために、働いてくれていることを分かっていたから。
それでも、父が求める時間と私の求める時間には、もう差が出すぎていただけなのです。
そして、私は父の背中を見て育ったためか、父と同じ営業職に就き、父と同じやり方で営業をしていました。(効率が悪いと当時の上司には思われて、嫌われていましたが)
でも、馴れ合いでなもなく「女」を武器にするでもなく、営業をするには父の手法しか私には思いつかなかったのです。
同僚の男性陣は私が「女」だからいい仕事がもらえる、と思っていたようですが私はお客さんが「こんな感じのものがほしい」と言われれば、色々なところを探し回りニーズに合ったものを地道に探し続け、信頼を得ていたことを見ていてくれなかったようです。
同業他社の営業さんや、メーカーの営業の人のほうが「よく、あんなの見つけてきたね」と感心してくれていたくらい、駆けずり回っていたのに。
(お陰で同業他社さんからいい情報をもらえたり、かわいがってもらえてラッキーでしたが)
メーカーさんもギブ&テイクを分かってもらえる人には、かわいがってもらえたし。
あ、ちゃんとそのメーカーさんが売り込みたい商品は、うまくニーズに合ったお客さんにプッシュして恩返しはしていましたよ!時には個人売りをして、自分の儲けは殆どない状態なんてこともしたくらい。
母は、帰りの遅い私を「女の子なのに」と嘆いていましたが、さらっと「仕方ないじゃん、お父さんの娘なんだから仕事の仕方もお父さん方式になるよ」と言って、さらに嘆かせてしまいましたが
父は、たぶん母から聞いていたのでしょう、遅くても何も言いませんでした。
休日出勤するときにも、快く送り出してくれるくらい。
そして、今、私の夫は当時のメーカーさんで私をかわいがってくれていた人です。
入社してしばらくして「この人の仕事は父に似ている」と感じ、ずっと「この人をお手本にして仕事をしよう」「この人に認められる営業になりたい」と思ってきた人です。
そんな人に、営業どころか1人の人間として認めてもらえた私って、すごい幸せ者
ま、帰りは父と同じくらい遅いけどな。
結局、おいらはファザコンだったんでしょうね。
何が言いたいかって、人って値段だけじゃ決めないってことあるよねってこと。
値段ももちろんだけど、それまでの過程やその後のフォローを見ていてくれる人はちゃんと見ていてくれるってこと。
その上で、値段がちょっと他社より高くても「その後のフォローを含めた価格」で考えてくれたりするんだよね。
そんな私達夫婦はスーパーで、マネキンのバイトをしているおねーちゃんが必死な声で宣伝していると、ついフラフラと寄っていって味見して多少大げさに褒めて購入してしまいます
だって、新人の頃の自分を思い出して切なくなるんだも~ん。
それに他の人もワラワラ寄って気安くなるしね
それでもって、これは夫にも言ってないヒミツだけど私、会社を辞めるときにおいしい情報は全部、引継ぎの同僚ではなく仲の良かった他社さんに教えちゃった
だって「女だから営業、楽でいいよね」なんて言う人より、「頑張ってるよね、無理しすぎると体壊しちゃうよ」と労わってくれる同業他社さんのほうが、私のやり方に近かったしね。
あ、でも、そこの会社の人は女性の営業さんが何人もいて苦労しているのを見ているから、私の苦労も分かってくれてたんでしょうね。
でも、そこも夫の取引先だからいいのだ!
なんで、突然こんなことを書いているのかというと、最近、身近でそういう体験があったから。
だから、人って心で繋がるんだなぁって思ってたら、昔を思い出して書きたくなってしまったおばちゃんの独り言です。