ここだけのふたり!!(森下裕美)
30年来巨人ファンのためほとんど読売新聞のうちの実家が、大量の洗剤につられて乗り換えたのか毎日新聞になっていた。夕刊のまんがが森下裕美だったのでたいそうおどろいた。こういう4コマが、一般紙に載るのかー。というより、新聞の4コマまんがが、一時代前のものだったということだろう。田島みるくも読売新聞の夕刊に載っているらしいし(未確認)、ちょうど世代交代なんすかねえ。 「ここだけのふたり!!」は、ここ5年は確実にずっとまんがくらぶの表紙を飾る巻頭カラーの連載である(その前は購読していないので・・・)。高校教師の夫と元教え子の妻(この主人公の2人に固有名詞はない)、それをとりまく人々がいろんなことをやらかすという、こうして文に書いてみると非常になんとも平凡なまんがのようなのだが、平凡な「外枠」だからこそ、この作家の非凡さが際立っている。 4コマ雑誌は基本的に月刊誌であり、掲載されるまんがは、極めて不条理な設定のものでないかぎりは、季節の話題を織り込んで描かれている。例えば週刊誌連載のスポーツまんがなどが試合の時間中を何ヶ月もかけて展開するのとは全く違う構造をもっている。日常という外枠をもつ多くの4コマ作品は、季節の年中行事を盛り込むことで、「日常」の感じを出している。俳句を詠むときに季語を必ずいれるようなお約束である。 いまや日本における季節感は4コマまんがか、アニメのサザエさんの中にしか存在しないと言っても過言ではない。(この「4コマまんが俳句説」については、後日また書きたいと思っている)余談が長くなったが、そんな日常を刺激的にしているのは人物のリアルさに他ならない。この場合のリアルは、小市民的なセコさや少しの醜さであり、そのさじ加減が過剰でないところが読んでいて心地よいのだと思う。 いしかわじゅん氏は「ここだけのふたり!!」の面白さを、登場人物たちが、それぞれちょっとした悪意をもった人物として描かれているところにあると評している。森下裕美の他の作品には悪意のかたまりみたいな人ばっかり出てくるものもあるし、代表作の「少年アシベ」などはその反対に悪意の人はほとんどいない。バランスのちょうどとれたところにこの作品が位置していて、それが多くの人の支持を得ている理由でもあるように思う。3月27日には待望の9巻が発売だ!