花男(松本大洋)
父の書斎に、古い1本のカセットテープがある。「何回、いや何十回聞いたかわからないよ」と父は笑う。「読売巨人軍は永遠に不滅です!」・・・「神」の引退式である。ビデオのない時代、神の最後の声を保存するには、テレビのスピーカーにカセットデッキを近づけて、録音するしかなかった。そんな父は、初めての娘に、「神」の妻と同じ名をつけた。あの世代にとって、彼は「神」であった。その娘である私は、茂雄と名づけられた主人公を笑う事はできない。この物語は大人の童話、いや、「神話」である。多くを語るつもりはない。とにかく読むべし!と、誰にでも薦めている作品である。いろんな人に貸しては返ってくる、我が家で一番出入りの激しいまんが。