本多孝好「正義のミカタ~I'm a loser」(集英社文庫)
いじめられっこが大学入学を機に心機一転リセットを謀る。あるきっかけから「正義の味方研究部」に入り新しい生活をスタートするが・・・。過去の作品「MOMENT」などを知る者からは「?」と思わせる直球な展開だが、やはりただの青春小説にはならない。深いところに抱えている闇と、他人が手をだせない孤独。危なっかしさ漂う繊細さと醒めきれない視線が作品をスリリングなモノにしている。下手に書けば「劣化春樹」とかいわれかねない対人距離。「悪」もリアルだ。リアルだからこそ正義という言葉で断罪しきれないやさしさに迷い、断罪しきれないことを認める強さをもとめていくのだ。ひとりになる勇気。ひとりになるからこそ気づくひとりじゃないこと。青い。だが好きだ。同世代のせいかしらん?とプロフィールの年齢欄をみて思ったり。(♂)