浅田次郎「終わらざる夏」(集英社文庫)
浅田次郎「終わらざる夏」を読み始める。 8月15日を過ぎて行われた占守島の戦いを題材にしている。この戦闘自体は私は小林よしのりの漫画で知った。これがなければソ連が北海道まで進出していたかもしれないという。その割には焦点があてられることがない。平和教育とやらの邪魔なんだろうか。 戦いの是非はともかく出てくる登場人物の描写の細かさにぐっとくる。 体重の乗り方が絶妙なのだ。「大義」とか「イデオロギー」ではない、いま目の前の自分の重大事と突然の召集令状という不条理へのケリのつけかたがなんともいい。反戦とか賛美ではない、日常の延長としての戦争。かっこわるくも胸にせまるものがある。 仕事をどうするのか。家族をどうするのか。世間体は? 小声の歴史証言というのは消えていく運命だろう。普通の話、というのをもっと聴きたいのだ。ささいな話でいい。勇ましくない人の、勇気ある話が知りたい。 まだ読み終わっていない。じっくりとかみしめたい。(♂)