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2016.03.22
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カテゴリ:古代ギリシア

ヘシオドスが作者であるとされている詩"The Shield of Herakles"(ヘラクレスの盾)を読み終えました。
最近は、英語版Wikipediaやイラクリオン現地で購入したクノッソス宮殿解説書などを読んでいたので、ある程度は英語文献に慣れてきたと自負していたのですが、やはり詩の形式なのもあって読みづらかったですね。一読しただけだと理解度は80%くらいなので、もう何度か読み返さねば・・・!


Herakles.jpg

"The Shield of Herakles"は、カナダに留学していた親友が日本に帰ってきた時に、お土産としてプレゼントしてくれた本です。"The Shield of Herakles"の他に、ヘシオドスの真作である"The Works and Days"(仕事と日々)と"Theogony"(神統記)が収録されています。訳者はRichmond Lattimore氏で、一冊でヘシオドスの三作が読めるというかなり優れた書籍です。

この本をくれた親友には感謝してもし切れません!転勤のせいで再び離れ離れになってしまうのが悲しいです・・・orz
ちなみに、"The Works and Days"と"Theogony"に関しては、どちらも日本語訳版を所有していたので、「英語だとこんな言い回しになるんだ~!」と気軽かつ楽しく読むことができました。


さて、"The Shield of Herakles"のストーリーを簡単に説明すると、以下のようになります。

軍神アレスとその息子キュクノスは、光明神アポロンの神域を暴れ回っていた。ヘラクレスとその従者イオラオスは、トラキスに向かう途中に、彼らと出くわしてしまった。
ヘラクレスは彼らに立ち向かうべく、装備を整えた。その中で、鍛冶神へパイストスから贈られた「ヘラクレスの盾」は実に見事であり、宇宙の摂理や戦争風景、英雄の偉業、都市の様子などが細かく彫り込まれていた。女神アテナが舞い降りてきて「ゼウスからキュクノス殺害許可は出ている。でもアレスには気を付けて」とヘラクレスを励ました。
ヘラクレスは襲い掛かってきたキュクノスを、槍で喉を一突きにして殺した。息子が死んだことで激昂したアレスは暴走し、「ゼウスからヘラクレス殺害許可は下りていない」とアテナに制止されるもそれを振り切り、ヘラクレスの盾に向かって槍を投げつけた。次には剣を引き抜いて攻撃しようとするも、ヘラクレスに太ももを槍で突き刺され、大地に倒れて戦闘不能になる。従者(恐怖とパニック)に連れられてアレスはオリュンポスへと帰り、ヘラクレスたちもトラキスへと向かう。


かなり省略して簡単にしましたが、大雑把に言うとこんなストーリーでした。大半がヘラクレスの盾の描写で占められており、そこに装飾として彫られている宇宙の様々な営みが、数ページに渡って具体的かつ細やかに語られていました。
これ、まるまる『イリアス』におけるアキレウスの盾のパロディです。笑
ホメロスの大傑作『イリアス』にも似たような描写があり、アキレウスの盾もヘラクレスの盾同様、宇宙秩序の営みが具体的に彫刻されています。"The Shield of Herakles"の作者が(ヘシオドスとされていますが違うでしょう)アキレウスの盾から多大なる影響を受けたのは言うまでもありません。

盾の描写以外にも、『イリアス』の影響が随所に見られます。戦闘描写もそうですし、武将(本作ではキュクノス)が討ち取られた際、それを倒木に例えるのも、『イリアス』では頻出の表現です。曲がりなりにもヘシオドスが歌ったと伝わっている作品なのに、ここまで『イリアス』の影響が見られるんですから、当時どれだけ『イリアス』が別格だったかがよく分かりますね。

無論、ヘシオドスの味も出ています。ヘラクレスとキュクノスの雄叫びを、木々を薙ぎ倒しながら転がり落ちる大岩に例え、周辺国まで轟いたと描写する壮大さは、『神統記』の壮大さと似ているものがあります。ただ、こうした壮大さはホメロスにも当てはまりますがね・・・笑


このように、"The Shield of Herakles"は、ヘシオドスの作品とされているのに、ホメロスの影響が色濃く反映されているという、大変興味深い作品でした!ヘラクレスには重装歩兵スタイルではなく、弓矢と棍棒で戦ってほしかったですがね・・・笑






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Last updated  2016.03.23 16:31:35
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