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2016.08.27
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カテゴリ:古代ギリシア
パウサニアスの『ギリシア案内記』上下巻(岩波文庫)を読み終えました。同書には今まで知らなかった情報がてんこ盛りで、非常に興味深く読むことができました。(途中、古代ギリシャ展の図解に浮気していた時期もありましたが・・・笑)


『ギリシア案内記』は、パウサニアスという紀元後二世紀頃(ちょうどパクス・ロマーナの時期)の旅行家が、ギリシア各地を旅して書き上げたものです。アッティカ、エリス、ラコニア、フォキスなどの地方を巡り、そこで得た建造物・地理・神話・祭儀・歴史に関する情報がびっしりと詰め込まれています。全10巻で構成されており、その量は極めて膨大で、全ての巻に目を通すのに一年ほど掛かってしまうかもしれません。

ここでお気付きの方もいらっしゃると思いますが、岩波文庫版『ギリシア案内記』は、パウサニアスの著した10巻全てが収録されているわけではありません。1巻目のアッティカ地方、2巻目のアルゴス地方、10巻目のフォキス地方のだけが翻訳・収録されています。訳者によれば、「観光で人気のある地域に絞った」らしいですが、私個人としては、10巻全てを詰め込んでほしかったですね。是非ともパウサニアスのエリスA、エリスBの巻を読んでみたかった!まぁ、この願望はPerseus Digital Library(古典ギリシア語のまま、もしくは英訳されたギリシア文献が無料公開されているサイト)で解決できるので、黙って英語を読むことにします。笑

さて、というわけで、パウサニアス『ギリシア案内記』に関しては、岩波文庫版に収録されているアッティカ地方、アルゴス地方、フォキス地方(あと、上記のサイトでチラッと読んだエリス地方)ぐらいしか読んでおりませんが、それでも大満足な情報量でした。地理や建造物が細かく描写されており、同書が発掘作業や古典考古学においてある種の指標になっているというのも納得です。


『ギリシア案内記』最大の魅力は、パウサニアスと共に当時のギリシアを旅できることです。古代ギリシア遺跡がまだ生きている時代を、です。
無論、パウサニアスの生きた時代はローマ帝国全盛の時代でしたから、ギリシアの栄光はもはや過去のものとなっています。しかし、キリスト教信者によってギリシア神話の聖域・神域が破壊される以前の時代であることには変わりありません。その時代を旅することのできたパウサニアスには、「羨ましい」の一言です。

例えば、デルポイ。私がかつて旅行した際には、荘厳な風景が広がっていたとはいえ、アポロン神殿はボロボロの状態であり、奉納品は一切ありませんでした。(一部、博物館にて生き残っていましたが)
しかし、パウサニアスの目の当たりにしたデルポイは、神域があり、奉納品があり、巡礼者がいて、巫女もいる。
「ここでネオプトレモスが暗殺された」
「スパルタ人の奉納品が並んでいる」
「これがクロノスがゼウスの代わりに呑み込んだ伝説の石」
「ポリュグノトスが描いたトロイア陥落の絵画が飾ってある」
などなど、生きたデルポイが『ギリシア案内記』には広がっていました。古代時代の文献なので、古代ギリシアが生き生きとしているのは当たり前なのですが、純粋に「いいなぁ~、生きた古代ギリシアを旅行できて・・・」と思ってしまいました。笑



パウサニアスはローマ時代の旅行家なだけあって、ヘレニズム時代のギリシア史をたびたび言及してくれます。ヘレニズム史はあまり把握できていないので、リュシマコスやプトレマイオスなど、ヘレニズム諸王の生涯が簡潔にまとめられていたのには助かりました。研究者によっては、パウサニアスによって伝えられているヘレニズム史を史料的価値の乏しいナンセンスなものと捉える人もいるそうですが、私はそうは思いません。考古学調査におけるパウサニアスの正確さを鑑みれば分かることです。


パウサニアス『ギリシア案内記』は、ギリシア旅行時に是非とも持っていきたい書物でした。地理描写が多くて想像が大変でしたが、他文献にはないユニークな神話伝承が収録されてたりもするので、読む価値は大いにあります。
前回旅行時はヘロドトス『歴史』を携帯していったのですが、次は『ギリシア案内記』を持っていこうかな笑





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Last updated  2016.08.28 19:55:56
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