2471916 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

リュンポリス

リュンポリス

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

リュンポス

リュンポス

Recent Posts

Archives

2024.09
2024.08
2024.07
2024.06
2024.05
2024.04

Category

Free Space

Headline News

2016.09.18
XML
カテゴリ:古代ギリシア
古代アテナイの民主制に関する第一級の史料『アテナイ人の国制』を読み終えました。本文の分量はさほど多くもないのですが、訳者:村川堅太郎氏による注釈が膨大で、読破するのにかなりの時間がかかりました。笑
しかし、注釈が多いというのは嬉しい悲鳴ですね。詳しく丁寧に、しかも参考論文まで載せてくれているので、非常にためになりましたし、その膨大な論文を読みこなした村川氏には畏敬の念を感じずにはいられませんでした。



『アテナイ人の国制』は、アリストテレスによって書かれた本だとされています。一部の学者には否定派もいますが、やはりアリストテレスを作者だとする説の方が有力視されています。
アリストテレスは世界で最も有名な哲学者の一人であり、「万学の祖」と称されるほど偉大な存在です。あらゆる学問を研究し、西洋最強の大英雄アレクサンドロス3世の家庭教師でもあった彼は、ギリシアに興味の無い人でも名前ぐらいは知っているはずです。

その偉大なるアリストテレスですが・・・、実は『アテナイ人の国制』を読むまで、私は彼の著作に触れたことすらありませんでした。笑
もちろん、彼の生涯や思想に関しては知っています。しかし、原典に目を通すというようなことは今までしてきませんでした。というのも、古代ギリシアの神話・歴史を中心に原典を読んできていたので、まだ哲学にまで手が回っていなかったんですね。哲学に関しては高校の「世界史」や「倫理」で学ぶ程度の知識で満足してしまい、今まで追求したことはありませんでした。(とはいえ、トリプルAクラスに有名な『ソクラテスの弁明』くらいは読みましたが)

『アテナイ人の国制』に手を出そうと思ったきっかけも、「アリストテレスだから!」ではなく、「古代アテナイの政治的仕組みを詳細に知りたかったから」でした。その目的は達成できたと言えます。『アテナイ人の国制』では、アルコン(いわゆる執政官)や評議員の選出方法、彼らの仕事内容、民会の開催頻度及び議題、民会参加者の具体的な給料、資格審査の内容、陪審制の仕組みなどが平明な文章でまとめられており、古代アテナイの政体を知るには最高級の史料でした。勤労不能者に毎日2オボロスずつ支給する制度など、現代で言う生活保護のようなものまであったことも分かり、古代アテナイに対する見識がより広がりました!

ちなみに、同書には古代アテナイ史の要素もありますが、アリストテレスは自らの思想(重装歩兵民主制、すなわち緩やかな寡頭制を理想の政体とする考え)に左右され、トュキュディデスほど客観的に歴史を概観できていないので、歴史書として読むとそこまで優れているとは言えません。私が一番気になる箇所(エピアルテスやペリクレスがどのようにアレイオス・パゴス会議の権力をもぎ取ったのか)がザッとしか書かれていない上に、致命的な間違い(ペリクレスとテミストクレスを混同。アリストテレスはペリクレスを好ましく思っていなかったとはいえ、なぜこんなミスをしたのだろうか)もあるので、歴史書として読んだ場合は消化不良になっていたでしょう。

しかし、前述の通り、古代アテナイの国制を知る上では申し分ない一冊でした。それに加えて、アリストテレスその人に対する興味も今まで以上に湧きました。というのも、同書の欠点としてあげた「自らの思想に左右され、客観的に歴史を概観できていない」ことは、逆にアリストテレスの政治的思想を知る上では絶好の資料であるからです。
特に興味深かった点は、徹底したペリクレスの軽視です。ペリクレスは民主制を世界で初めて大成させた偉人であり、あのトュキュディデスにも賞賛され、15年連続でストラテゴス(全権将軍)に選ばれる(現代日本でいうと、15年連続で内閣総理大臣に任命!ぐらい凄い)ほどアテナイ市民に人気がありました。ところが、アリストテレスはペリクレスを(テミストクレスと間違えるほどに)軽視していました。そもそも、アリストテレスは民主制自体、理想的ではないとして批判しています。そして、武器を自前で調達できる中流市民(重装歩兵)たち5000人による国制を、全市民参加型民主制よりも「善」としていました。

現代社会において、最高の政体は「民主主義」とされています。なぜ「万学の祖」とされ、最高の知能を持つアリストテレスは、民主制を良しとしなかったのでしょうか。おそらく、衆愚政治の批判から民主主義への批判に繋がるのでしょうが、それ以外の理由もあるはずです。無論、私は反民主主義者でもなんでもないので、単なる知的好奇心からですが、ポピュリズムが横行し、各地で民主制が軋んでいる今だからこそ、知りたいと思ったのかもしれません。

まぁ、民主主義を是としないのはプラトンも同じですが、プラトンのは哲人政治という、完全なる理想主義ですからねぇ。いずれはプラトンの思想も紐解きたいですが、まずはアリストテレスの『政治学』『ニコマコス倫理学』を読み、上記の疑問に答えたいと思います。

しかし、アリストテレスも気になりますが、アリストファネスの喜劇も読みたいですし、クセノポンの『ギリシア史』も興味深いです。しかも最近になって古典ギリシア語も勉強し始めましたし・・・、ただでさえ読むスピードが遅いのに、読みたい本が多すぎる・・・!笑
・・・すぐに読む!というわけではなく、長期的な目線で、いずれ、ということにしておきます。笑





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2016.09.18 18:27:35
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.
X