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カテゴリ:古代ギリシア
歴史家クセノポンの著した書物『アゲシラオス』を、古典ギリシア語で読んでみました。古典ギリシア語に関しては語彙力がほぼゼロなので、分厚い辞書をパラパラめくりながらゆっくりと解読した結果、読破するのに3ヶ月ほどもかかってしまいました。笑
本書のタイトルにもなっているアゲシラオス2世は、史上最も有能なスパルタ王の一人です。部下の育成に競争原理を持ち込んで精鋭部隊を作り上げ、サルディス太守のティッサペルネスを叩き潰し、騎兵対決では優秀なテッサリア騎兵を敗走させました。 スパルタ滅亡の危機に際しては、エジプト王に仕えて資金を調達し、スパルタ再建に尽力しました。そのエジプト遠征中にアゲシラオスは死亡してしまいましたが(84歳という大往生でした)、亡骸は稼いだ資金と共にスパルタへと帰還し、死後でさえも祖国に貢献したと讃えられました。 欲に溺れて道を踏み外したパウサニアスとは違い、アゲシラオスは自らの野望よりも祖国スパルタのことを考え、敬神的で礼節を重んじました。アナバシス後にスパルタ軍入りした傭兵クセノポンはアゲシラオスの名指揮官ぶりや人柄に魅せられ、彼を心酔するようになり、その賞賛のために著した本がこの『アゲシラオス』です。 本書では、クセノポンがこれでもかというほどアゲシラオスを絶賛します。伝記の要素もありますが、機能としては祝勝歌に近いですね。クセノポンは自分に都合の悪い事柄を無視する傾向があるので、本書だけでアゲシラオスの功績や人柄を判断しては事実を見誤ると思いますが、彼にクセノポンを熱狂させるだけのカリスマ性があったことは確かでしょう。 アゲシラオスの伝記はプルタルコスも書いているので、是非読み比べてみたいですね。 クセノポンの原語はアッティカ方言ですし、哲学書ほど難解な表現が無かったため、なんとか読み進めることができました。古典ギリシア語版と共に英訳版も載っていたので、どうしても訳せなかった場合は英訳を参照しました。それでも腑に落ちない表現や文法があったので、「独学じゃなくて講義だったら、すぐ質問できるのになぁ」と大学時代に学びたかったとちょっと後悔・・・。文法書や辞書を読み漁って不明点をできるだけ無くすよう努力はしましたが・・・。仕事終わりに地道に解読していたので、大学院で思う存分専門的に学習できる学生が少し羨ましくなりました。笑 次は、古典ギリシア語でクセノポンの『ラケダイモン人の国制』でも読み解こうかなと思っています。ホメロスやヘシオドスなどのイオニア方言解読も考えましたが、イオニア方言を体系的に網羅した文法書を今のところ発見できておらず、Perseus Digital Library頼りになるのが目に見えているので(Perseus Digital Libraryでヘシオドス『神統記』の原文を読んだことがありますが、やはり自分で辞書を使って解読しないと原語で読んだ気がしませんね・・・)、今後もアッティカ方言を中心に読んでいく予定です。 ・・・『ラケダイモン人の国制』は読み終えるのに何ヶ月かかるのやら・・・。笑 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.06.10 10:52:00
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