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今夜も空の下~世界放浪浪漫譚~

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えの1970

えの1970

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2007.10.07
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カテゴリ:中近東編

2000円2月23日


おそらくは普通の旅行者が聞いたこともないような土地に今僕はいる。
今僕がここにいるということは家族も友人も誰も知らない。
そして昨日初めてこの土地に来た僕もまたひとりぼっちだ。

思いがけず心底冷える寒い朝に今が2月だということを知る。
そして今自分がエジプトシナイ半島の聖カトリーヌという土地にいることを知るのである。

部屋の外に出ると寒さがいっそう肌身にしみた。
そして凛とした青空の下には荒涼とした砂漠が広がっていた。自分でわかしたモーニングコーヒーをすすりながら、出発の準備を整える。
今日はモーセの十戒で有名なシナイ山に登る予定である。

といっても、たかが砂漠の2000m峰。ハイキングというよりは散策みたいなもので、お気楽に水やらお菓子やらザックに詰め込んで8:00に外に出た。
とりあえず、時間はたっぷりあるし、シナイ山とは反対方向にある町に行くことにした。

朝の空気は冷たく吐く息が白い。
そしてサンダル履きの足がとてつもなく冷たい。
日本から吐いてきたスニーカーはケニア山ですでにぼろぼろになり、ポーターにさえ「It's finish!」とさえ言われるほどだったので、ナイロビで捨てた。
代わりにカイロで靴を買うつもりであったが適当なものがなく、まあいいやサンダルでと、ここまで来てしまったのだった。

 

Pim0012.jpg


見渡す限りの砂漠と砂山の中てくてくと歩いて15分。町とはとてもいえないショッピングモールのようなものが砂漠の真ん中にぽつんとあって、食料を少々買い込むともはや何もやることがなくなったので元来た道をたどってシナイ山登山口を目指した。


しかしシナイ山は世界的な観光地であったのだ。
登山口となる修道院に着けば観光バスはウヨウヨ、今までどこにいたのか観光客ははぞろぞろ、ラクダ引きがごろごろ、そんな中を一人とぼとぼ。
修道院はシナイ山の登山口。
薄ら寒い砂漠にあった花の咲くオアシスだ。
こんな寒い日に花が咲いているんだなあと思ってよくよくみれば、咲いているのはなんと梅の花だ!
そういや日本でも梅の季節。
「梅の花が咲く頃に会おうね」と言った彼女のことを思い出す。
同じ時期に日本とは遠く離れた場所で梅を愛でるとはなんと風流なことだろう。
Pim0018.jpg
一首できた。

「弥生待つ花白梅の香をかげば  昔のひとの袖の香ぞする(※新古今和歌集より盗作)」


9:10に修道院をたった。
うじゃうじゃいた人混みも修道院泊まりで、ここから山に登るのは僕ひとりのようである。
今回は地図も何もまったく持ってきていないが、道はまるで舗装道路のように立派で迷うところもなければサンダル履きでも全く問題ない。
しかしさすがに天下のシナイ山。簡単に登れてはモーセに失礼なのだ。
道は徐々に急になり息も上がってくる。
道の両脇には土産物屋風の建物が連なっているが今はどこも開いていない。
おそらくは稼ぎ時は夜明け前なのだろう。
そう、シナイ山の登山客はほとんど頂上でご来光を眺めるのだ。
でも富士山もそうだけど、何で素人が山に登るとご来光を拝みたがるのだろうか?山の良さは朝だけじゃないのにね。
なんてひねくれたことを思いながらも、確かに頂上から茜色に染まる砂漠を眺めたらさぞや美しいことだろう。
ましてや、今夜は満月である。
こんな日に頂上で野宿したら最高だろう・・・


そんなこんなで結構時間かかって11:40に頂上についた。
朝は吐く息白かった空気も今では暑いくらいの日差しが遮るものひとつない空から降り注いでいる。
周囲はひたすら岩と砂ばかりだから、日中に眺めるにはやはり退屈で、すぐに下山を開始した。
急な下りはサンダル履きには歩きにくくって修道院に戻ったのは13:00頃だった。

14:30に宿に戻り、シャワーを浴び、洗濯をした後でコーヒーを煎れて中庭で飲んだ。
心地よい疲労が体を包む。そしてまたひとつ登りたい山に登った感激が心を癒す。

目の前には砂漠が果てしなく広がっている。

そしてまた、ケニア山から降りてきた時と同じ気持ちが心の奥からほとばしってくる。

山に行きたい。
旅に出たい。

まだまだ僕は夢の途上にいる。
そこで足踏みしている暇はないのだろう。

寂しさと裏表の感情が交互に表れては僕の背中を前へと押し出してゆくのだ。
まるで憑かれたように。
この感情を一体誰がわかってくれるだろう。

「旅につかれ 夢は砂漠をかけめぐる(※奥の細道より盗作)」

僕はふと自分の夢を叶えるためにイギリスに行ったK子のことを思い出して、そんな気持ちを手紙に書いてみた。
夢と寂しさの裏表の感情に揺れながらきっと僕の彼女に対する思いも揺れている。そんな予感を感じながらである。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜になると宿は急ににぎやかになった。
宿の食堂(といっても座敷)でいつもようにエジプト定食を食べていると日本語ががやがやと聞こえてくる。

なんとこんな町のこんな宿に日本人女子大生卒業旅行3人グループのお出ましである。
久々の日本語に少々おしゃべりが弾んだ。
何でも、旅行サークルのメンバーでエジプト旅行中。シナイ山に登るためにこの聖カトリーヌに来たと、リーダー格のしっかりした女の子が話してくれた。
そして明日の朝は危険だし寒いので日中登る予定なんだけども、うち一人の女の子がどうしてもご来光が見たいので一人で早朝登るのだけど不安なので、いろいろ教えてくださいと言って来た。

異国の地で暗闇の中、女の子一人で山に登るのではそりゃ不安だろうに。
後1日早く出会っていたらご一緒したところだけど、さすがに女の子にほだされた2日続けて同じ山に行く気はなかったので必要なアドバイスをしてあげた。

ああでも、こんな砂漠の町の薄暗い宿で、久々に楽しい時間をもてて、またひとつ元気をもらった気分である。






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Last updated  2007.10.08 00:20:31
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