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Hale Mahina

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2006年01月04日
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カテゴリ:人生
 はるさんからの課題 その2
 
大人になってから 泣いたことは 多々あり。
その中でも 心から 悲しくて泣いたのは たまの死を 知らされた時。
彼女との出会いは 22年前にさかのぼる。
小田急線の 向ケ丘遊園を降りて 川沿いを 家路へと 向かう途中 
声も出さずに 足にすり寄って来た猫。
いつもなら 抱き上げようと したとたん 腕をすり抜け 逃げ出す 他の猫たち。
でも、彼女は 違っていた。
私たちは 一緒にアパートへと 帰った。
賢い猫で 外に出しっ放しで 仕事に行くのだが 帰ってくる頃には 
いつも アパートの 階段の所で 私の 帰りを待っている。
時間がずれて いつもより遅くなっても それでも やっぱり待っている。
忠犬ハチ公ならぬ 忠猫たま。
近所の コンビニに 出かけるにも 一緒だった。

しばらくして 引越すことになり 夜行寝台で あおもりへ。
台所で 料理をしていると 後ろから ダダッーッとかけて来て 背中を駆け上がり
肩の上に腹這いになる。襟巻きのような状態。
手乗り文鳥ならぬ 肩乗りたま。
時には まな板の横で 料理の 邪魔をするでも無く じーっと座っている。
2年あまりで 13匹の子を もうける。

と 再び 私の都合で 東京へ。今度は新幹線に乗る。
世田谷の 都会猫から お誘いが多くなり、避妊手術へ。
猫病院から 帰ってくると 声が出るようになっていた。
初めて聞く 彼女の声。 とてもかわいらしかった。

と またまた引越し。
で 今回は あおもりへと帰ってもらうことに。
そして 離ればなれの生活が 始まる。

28で 活動拠点を あおもりへと移したものの 旅の続く生活で
彼女に会えるのは 毎日とは行かなかった。

32の春。3ヶ月の旅から 帰ってくると 彼女は ”あなたが帰ってくるのは
知っていたよ” というかのような 笑顔で 窓際から 私を見ていた。
その笑顔は 既に猫のものではなく、人間のおばあちゃんのようだった。

何か変?

そう感じ、母に尋ねると しばらく食事ができないらしい。
食べても すぐに 吐き戻すのだとか。
毛につやもなくなり 毛づくろいできないせいか 輝いていた毛が 薄く汚れていた。
その時の 私には 彼女を洗うことしか 頭に無かった。
シャンプーの後 仕事が控えていた私は ストーブのそばに彼女を座らせ
ドライヤーで 乾かすことも無く、母たちが 自宅にいるのを良いことに
仕事に出かけた足で アパートへと戻ってしまった。

数日後 姉からの電話。
”驚かないでね。たまが死んだよ”
その言葉を 全部聞くか 聞かないかのうちに 私は 大声を張り上げて 泣いた。
家族のものは皆 それをわかっていて すぐには電話しなかったらしい。
彼女を濡れたまま 置き去りにしたことを後悔した。
それよりも 毛が汚れているからと 洗ったことも後悔した。
そんな彼女を残して 仕事に出かけて 帰らなかった自分の生活が
まるで意味を持たない 無意味な時間の空回りに思えた。
彼女の体力を考えれば そんなことは どうでも良いことだったのかも 知れない。
洗うことで 満足したのは 自分だけだと思ったら 自分のエゴに 情けなくなった。

『たまは 首を長くして あなたが 旅から 帰ってくるのを 心待ちにしていたんだよ。』
と、姉が言った。
彼女は 久しぶりに会う私と 一緒に居たかったのだ。 
シャンプーよりも ブラッシングよりも そんなことよりも 一緒にいるということ。
彼女の老後は たった一つの思いだけを胸に 生きていた。
そしてその思いは 死ぬまでかなわなかった。

もう寿命だったから、あの日は寒かったし。と家族は言ってくれた。
亡骸は 母が 魚の缶詰とともに やさしく 浜辺に葬った。

その翌年 私は仕事をやめ 最後のサーフトリップへ出かけた。
最後の目的地は トドス・サントス。
海水は かなり冷たく、フルスーツでも 身が縮んだ。
寒風の すきま風が吹き込む 旧灯台の簡易ベットで フリースのジャケットを着たまま
寝袋に入って寝た。
シャワーは 雨水の泥色をした 地下水だけだったから
3日間の旅の間 身体は洗わなかった。
サンディエゴに戻って来た時 3度目のシャンプーで ようやく泡が立ったのを
覚えている。
それほど 身体は汚れていた。
最後の旅には もってこいの ハードコアな旅だった。
これで 旅を 終われると 思った。 

その翌年 私は結婚し ハワイへと移住した。

彼女の死が 私の生活を 移住型から 定住型へと 変えて行った。

実家で荷物をまとめていると 彼女の写真が出て来た。
太陽の下で 光を受けて 白い毛の部分が 輝いている。
相変わらず 笑顔だった。

今でも 切なくなる。笑顔で 待っていた彼女。
”寿命は 冬までだったんだよ。でも 春になると帰ってくる あなたを
待ってたんだよね。それが希望だったから。最後に会いたかったんだよ”
と 姉が言った。

動物は 動物にしか生まれ変われないと 誰かが言っていた。
不思議なもので 私は彼女にいつも 次は人間だね あなたは賢いから
と言っていたのを 思い出す。
救われた魂が 今はどこかで 肉体を得て 生きていてくれたらいいな~と
ふと 勝手なことを思う。

 






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最終更新日  2006年01月04日 20時39分41秒
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