Hale Mahina

～はるじーに　捧げる～
　
　きっと　時が　もう一度　わたしに　話すようにと　機会をくれた。　
そして　そこに　聞き役の　あなたが　座っている。

人生は　記憶をたどる旅。
皮膚の下に、瞳の奥に、身体を形成する　組織のありとあらゆる所に
私達は　記憶をしまい込んでいる。過去からの　未来からの。

経験することが　必要なのは　そのしまい込まれた　記憶を　呼び起こすため。　

本を読むこと　すれ違う香りに　反応すること　食べたり　飲んだりする行為
あるいは　それらを味わうということ。
変わりゆく空の色を眺めること。ふゆの空気の冷たさを感じること。
季節の　変わりゆくのを　匂いで　感じること。　
太陽に　温められた　土の　ぬくもり。
透き通った　海の青。

それらが　眠った記憶を　呼び覚ます。
行為が　記憶のもとに　リンクする。

DNAが　螺旋なのも　螺旋の方が　たくさんの情報を　ストアー出来るから。
私達の中に眠る記憶は　それはもう　膨大なものだと　わたしは思う。

その記憶を　呼び覚まして　旅は終わる。
開けないページは　次の人生の課題として。

記憶を　たどる旅、　痛みも　悲しみも　喜びも　愛することも　
全ては　記憶をたどるために。どこからきてどこへいくのか。

だから　痛む　必要はない。
それを証明したくて　わたしは　何度も　痛みと　苦しみの中に　自分をおいた。
そして　気付いた。気付いたら　解放された。

私達は　まっさらでは　生まれない。
私達の　皮膚の　下には　たくさんの　記憶が　しまい込まれている。
それは　何層にも　重なっている。

経験していくことだけが　歩き続けるものだけが　その記憶の扉を　ひとつ　またひとつと
開けていく。