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「…ん?」
どこか…すぐ近くで、何かが鳴っている。 「…携帯電話?なんでこんなところに…」 手に取ろうとしたその時。 『ダメッ!!』 彼女のあまりにも大きな声に、『僕』は驚いて彼女を見つめた。 彼女は、ゆっくりと、電話を手にとり、ボタンを押した。 『…はい…はい…分かっています…はい…分かりました。戻ります。』 なんだか、あまりいい話ではないようだ。しばらくすると、彼女は電話を切り、ゆっくりと、『僕』を見つめた。 『そろそろ、戻らないと。ここからは、貴方が1人で行って。』 「え?どうしたんだい?突然。」 『時間が来てしまったの。私は戻らないと。』 「行くって言われても…どこへ?」 『迷う事はないわ。ほかに行くところはないんだから。』 「でも…えっ?」 『僕』は自分の目を疑った。 今まであった、普通の風景…それが、目の前から消えていた。 右も左も、見渡す限り水… これは、海ではないらしい。塩の匂いが、まるでしないのだ。 だが、更に不可解なのは、ちょうど『僕』と彼女の分、2人分の道が、なぜかまっすぐつながっているのだ。 水は、僕達の頭の上の高さまで、水はあるというのに。 モーゼの『十戒』のように、綺麗に水がわれているとしか考えられないのだ。 『私…行かなくちゃ。』 「どうして…どうしてだよ?僕は、もっと君と話がしたい。僕が忘れているいろんな事を、君の口から教えて欲しいんだ。」 『ごめんなさい。それは、できないの。私は『こちら側』の住人じゃないから。 私はまだ、貴方の世界には行けないから。』 「…」 『全てが終わった時…貴方がもしも、またここに戻ってくる事があるなら、私、迎えに来るから…』 「…分かったよ。とにかく、僕は行くしかないんだ。 この先に何があるのか、分からないけど、行ってみるよ。 どうせ、死んでる身なんだ。何があっても驚きはしないさ。」 『…それじゃ。』 「ああ。」 ~~~ 『僕』は、彼女と別れた。 左右、そして後ろも、水に囲まれている。 …ふう。 前に進むしかない、か。 『僕』は、1人で、歩き始めた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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