この町に越してきたのは
中学1年生、まだ子どもだった私。
団地から、住宅地や工場のある街に
越したばかりで
機械の連続音の響く工場が
すごく印象的で
油まみれの木枠の
曇りガラスの戸が開けられた
隙間からその音の主を
目で追って探していた。
おじさんは言う。
「歯車、作ってんだよ。」
目を丸くして驚いている私に
「機械はみんな歯車で動いてんの。」
って説明をした。
真っ黒な手で歯車を取って見せてくれたりして。
機械油の臭いがいつもする。
でもリズムのいい工具の音が
なんか楽しかった。
毎日、磨いてるんだ。
いつの間にか私も大人になって
いつの間にか木枠の窓のある古い工場が
景気がいいのか綺麗なビルになって
1Fの曇りガラスの向こうは
いつもピタッと窓が閉められて
中が見えない。
きっと空調でも入っているんだろう。
私の好きな手を使って
真っ黒になりながら働くおじさんたちの
真剣な眼はもうみることができなくなった。
なんとなく気配が薄くなった町工場。
スーパーに行く路地の角にあるその工場
路地側のところにいつも干されているのか
並べられているのか
真っ黒の手袋がある。
今日も昨日も一昨日も
いつもいつも決まって4つ。
だれの手袋かわからないけど
真っ黒だ。
いつもいいツヤ、いい形、いい色って
思ってた。
なんか「働いている」って感じがする
手袋だなぁって
工場の象徴みたいで
見えなくなった町工場の
内臓をみちゃったみたいに
その手袋を通して、おじさんの手仕事が感じられる。
おもわず、写真を撮る。
お昼前の時間だったこともあり
おじさんが出てきたので
軽く挨拶。
「すみません、撮らせていただいています。」
そういうと、おじさんは
「何だ、写真撮ってんのか。」
って聞いてくる。
なんか答えなくっちゃって思って
「なんかいい形だなぁって
いつも思っていたんです。」と答えた。
そしたらおじさんは
照れくさそうに頭かきかき
「考えられねぇなぁ。」と
でもまんざらでもない感じで
満面の笑みで答えてくれた。
おじさんは手を指しのばすようにして
「どうぞ。どうぞ。」と
撮影を許してくださった。
この手袋は、この町、そのもの。
町のシンボルって言うか
勲章っていうか。
だけど、ぶしつけな質問をしてみた。
「この手袋って干しているんですよね?」
「そう。干しているの。
濡れているから…いや油でね。
汚いけど濡れていると使えないから
こうやって干すの。」
おじさんは、中学のときに歯車を見せてくれた
おじさんとは、また別の人だと思うけど
この町工場の人の気質は代々なんか似てる。
やっぱりなんか好きだ。
工場のある街2011.08.23中丸町 posted by (C)あっこ森
この感じが、この工場のカラーなんだろうな。
写真は8月23日に中丸町にて撮影しました。
東京在住、
撮影は自宅から自転車で行った場所が中心です。
ごく身近な自然に目を向けています。
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