森でのんびり
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モンゴルの特別なお料理に ホルホグという料理がある。 羊肉に岩塩をふり 焼いた石と一緒に鍋に入れ 蒸し焼きにする。 予定時刻を過ぎて、車が一台戻ってきた。 声をかけられてキャンプの一同が会する。 羊がなかなかつかまらず、 一匹目は痩せていたので放し 二匹目を捕らえてきたと言う。 羊は、子ども用のビニールプールを 敷布代わりにしたものの上に 手足を縛られて乗せられていた。 羊さん登場2013.08.19モンゴル アルタンボラグ posted by (C)あっこ森 状況を察知してか ジッとしている。 集まったときには、羊があまりに静か過ぎたので もう死んでいるのか?それとも 麻酔でも撃ったのか?と思ったほど。 おそらく緊張と恐怖でその羊は、 糞をボロボロとしている。 さっき人間に捕まったこと、これから起きること この羊の身に起きたこと、起きようとしていることは おそらく経験のないことが、この羊には起きたんだと思う。 糞をもらす羊を見て、心が揺れる。 怖いよね。すごく怖いよね。 手足を縛られて自由を失い、 人間が周囲を囲んで立ちはだかる。 みんなが、神妙な面持ちで羊を見つめる。 これから、と殺が行われると知って キャンプの人々は集まってきている。 日本人のためのツーリストキャンプだから 日本人が多く、日常的にと殺を見たことが ある人は、おそらく少ない。 目の前で羊が殺される、 ということを目前にするのだから 心が動揺しないわけがない。 胸をいっぱいにして、羊のそばに立つ。 食べるということが、どういうことなのか。 食肉としてスーパーやお店で買うのとは 明らかに違う。 食肉になる前には、豚にも鳥にも牛にも羊にも 暮らしがある。 そのことと、食肉というのは、 イメージがかけ離れているのかもしれない。 だれかが、と殺をしていてくれて わたしたちの胃袋を満たしてくれている。 毎日毎日、命をいただいているんだ。 横たわる生きている羊を前に そんなことを思っていた。 いよいよ始まるときモンゴル人スタッフから わたし達にこう声がかけられた。 「そんなに神妙な顔にならないでください。」 皆が、顔を上げた。 そして、こう続けられた。 「日本でもこれと同じことが、毎日行われています。」 そうなのだ。 食肉としてパック詰めされた肉だって おんなじ運命をたどっているし もしかしたら、オートメーション化された方法で 毎日大量にと殺されて、いるのかもしれない。 小さなため息が、こぼれる。 そして、わたしたちに こう語りかけてくださったのです。 「この羊は、羊としての役目は終わりました。 次は、人間になります。」 命の循環が、凝縮された言葉の重さ、 そして心をどう保てばいいのかを 示唆しているかのような言葉。 わたしが毎日、東京で肉を食べるとき いちいち命を感じているか? おそらく、当たり前のように口にしている。 お米一粒だって 本当は種として次の命につながれば ものすごい数の子孫を育む親となれるのに わたしたちは、ご飯として、毎日食している。 “命をいただいているんだ。” そのことを受け取るためにも 羊の最期の姿は、目に焼き付けねば。 羊のと殺 まずは、糞を除き、場を綺麗にします。 胸にナイフ2013.08.19モンゴル アルタンボラグ posted by (C)あっこ森 次に手足を解き、二人がかりで足を押さえ 手を押さえ、胸の皮にナイフを入れます。 このとき羊は顔上げ、 己の胸を覗き込みました。 羊さん絶命へ2013.08.19モンゴル アルタンボラグ posted by (C)あっこ森 わずかな切れ目から、内臓に手を差し込み、血管を止血し 15秒ほどで意識がなくなります。 手足を落とします。 身体から、皮を剥ぐのですが 肉と皮の間に手を差し込み はがしていきます。 胆のうを取り外します。 胃袋を空っぽに2013.08.19モンゴル アルタンボラグ posted by (C)あっこ森 胃袋を取り外し、胃の内容物は、遠くに捨てます。 小腸など、消化器系をお鍋に移し 腸の内容物を除去します。 胃から上の臓器を 別の鍋に取り分けます。 羊さんの背骨2013.08.19モンゴル アルタンボラグ posted by (C)あっこ森 脊髄をすべて取り出します。 血液をカップで鍋に取り出します。 (これはサラミになります。) 頭部を胴体から離します。 まさに毛皮だけが残り、大地には一滴の血もこぼれません。 そして、このと殺を行ってくれたのは 若いモンゴル人スタッフ。 この技量にも感動。 現地に住むかわいらしい女の子がいました。 この子は、と殺が始まることを知っていて そばにいました。 怖かったのでしょうか、テントの中です。 内臓の下処理2013.08.19モンゴル アルタンボラグ posted by (C)あっこ森 小腸から内容物を除去するところを 割と冷静に眺めていたのに 脊髄がテントの中に持ち込まれたときに初めて 「ヒヒャー。」と声をあげ 口に手を当てて驚いていました。 皮を剥いだあたりから 羊から肉に見えました。 今でも心臓がどきどきしますが、 羊の命を心で受け取ったつもりで すべてを忘れたくありません。 ホルホグは、モンゴル出身のガイドの ゾルさんが、特に大喜び。 どうも、骨がついていないと“肉”とは 感じられないみたいで 普段、日本で暮らすゾルさんは 「一年ぶりに“肉”を食べた。」と喜び むさぼるように食べていました。 ゾルさんをはじめとするモンゴル人のスタッフと 日本人のわたしたちの肉の食べ方とでは 明らかに、違うのです。 わたしたちが焼き魚を綺麗に食べるときのように モンゴルの人が肉を食べるときは 真っ白な骨が現れます。 そして右手に包丁を持って (なぜか包丁の刃と背を持って) 骨を左手に持ち、包丁をカツンと 骨に当てて、骨に傷をつけてから手で折り、 中の髄液をチュッチュッとすするのです。 見事な肉のいただき方を見て わたしの食べ終わったと思っている 骨を見直すと恥ずかしい限り。 “これじゃぁ、羊さん、羊にも戻れないし 人間にもなれない…。” わたしが喰らいついたのでは 羊さんは、成仏できそうにありません。 申し訳ない…。 そのことをゾルさんに話すと 「いいよぉ~。」と快く許しをくれました。 ゾルさんは、丹羽さんが、肩甲骨の部位を 食べているのを知ると心底悔しがって 「いいなぁ。肩甲骨。食べたかったなぁ~。」と 言っていました。 肩甲骨は、そんなに美味しいんだ。 それさえもまったく知らなかったことです。 そして、蒸し焼きにしたときに出る 羊のスープが深皿に盛られ、みんなで回し飲み。 これが、濃厚なスープでまた美味しい。 うちの台所では、見ることがなかった部位のお肉が 次から次へと運ばれますが、どれも美味です。 おそらく生えているミント系の草を食べている肉の味は 日本では味わえない肉のうまみがあるのだと思います。 この肉を頬張る姿がまるでアニメの 『はじめ人間ギャートルズに登場する マンモス肉のイメージ』のようだと 誰かが言い始め、それぞれ記念撮影。 そして、まるで蟹を食べているかのように 徐々に無口に。 肉との静かなる格闘。 羊さんよ、次は人間におなり。 そして、命をありがとう。
写真は8月19日にモンゴル アルタンボラグにて撮影しました。
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