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テーマ:お勧めの本(7403)
カテゴリ:本
先日読んでた本のご紹介。
『私と20世紀のクロニクル』 ドナルド・キーン著 角地幸男訳 米国人で日本文学研究家のドナルド・キーン氏の自伝です。 『クロニクル』(年代記)というだけあって、20世紀初頭の少年時代から、16歳で 入学したコロンビア大学での日々、『源氏物語』との出会い、海軍の語学将校として 参加した太平洋戦争、戦後また日本文学研究へ、そして様々な日本の文学界との交流、 日本文学史をはじめ数々の出版・・・と、まさに氏の歩んできた歴史を辿る旅です。 読売新聞で連載されていただけあって平易な文章で読み易く、 その興味深い内容と相まって一気読みでした。 (挿絵は大好きな山口晃氏。ただし、挿絵の少なさには少々不満ですが) 日本とは縁もゆかりもないブルックリン育ちの氏が、たまたま本屋で見つけた 『源氏物語』(英訳版)にハマったというのが面白い。 当時はヒトラーのナチスがヨーロッパを席巻していた第二次世界大戦初期。 アメリカもいつ参戦してもおかしくは無い状況でした。それだけに、争いや暴力から 遠く離れた『源氏物語』の魅力の虜になってしまったようです。 そこから氏の日本に対する情熱が高まっていったのですね。 そして、コロンビア大での『恩師』角田先生との出会い。 生徒がキーン氏たった一人でも真摯に教鞭を執っていたということが、 彼の日本人観に影響を与えていたのではないかと思いました。 また、興味深かったのが戦時中の氏の体験。 数少ない日本語を話せる軍人として、アリューシャンから沖縄へと転戦。 そこで彼が読むことになる戦死した日本兵から出てきた数々の日記。 手書きの日本語もなんなく読めたようです。そこに綴られた日本兵の本音には、 プロパガンダのイメージとは異なるものを感じたのではないでしょうか。 それだけに氏は冷静かつ客観的に日本人の良い点、悪い点ともに 両面きっちり見ていますね。 ちなみに、氏は戦後まもなくの時期に、進駐軍の一員として日本へやってきます。 その際、同じ語学将校仲間との間で交わされた多数の手紙を 1冊の本にまとめたものがあります。 『昨日の戦地から』 ドナルド・キーン編 松宮史朗訳 これはまだ読了していないのですが、当時20代前半だった氏らが、いかに卓越した 視点で物事を見ていたかがよく分かり、ちょっと衝撃的でした。 後世になってから書いたものではなく、当時書かれた手紙をありのまま使用している ため、誤解や間違いなども一部にはあるのでしょうが、当時をリアルに知るための 史料的価値も高いと感じました。(あえて修正せずに出版した氏は偉い!) (早く読了せねば・・・) 脱線しました。 話を戻します・・・ 戦後は大江健三郎、安部公房、川端康成に三島由紀夫らとの交流が興味深かったですね。 特に三島。川端のノーベル賞受賞と三島の自決には因果関係があったとか。 少なくとも氏が相当に三島に惚れこんでいた様子は窺えました。(才人、才を好む?) 近松の浄瑠璃の英訳の話など、エピソードの多さにも事欠きません。 氏に興味を持たれた方には、ぜひおすすめしたい本です。 ドナルド・キーン氏は現在85歳だそうです。 老いて尚、創作意欲に燃える氏には、畏敬の念を抱きますね・・・ ・・・そ~いや、以前『明治天皇』という氏のデカいハードカバーの単行本 (上・下巻)も購入してたっけ。完全に放置状態でした。(既に文庫になってますが 涙) 早くここまで辿り着けるように頑張らないと(イツニナルコトヤラ・・・) *挿絵を描いてる山口晃氏は、この作品集がオススメです(しつこい? 笑) *『クリック募金』はじめてみました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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