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2008.01.04
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テーマ:お勧めの本(7402)
カテゴリ:
私が2日に読んでいた本です。

   『そこに日本人がいた!』 新潮社 熊田忠雄著

   
 
年末にまたまた読み切れないほど本を購入していました。
その中でもまず読みたかったのがコレなんです。一気に完走しました。

もともと私は日本と海外の交流史や、『海外から見たニッポン』的な話に興味があり、
江戸時代の漂流民についての本なんかも好きなんです。
そういう類の本はつい手にしてしまうタチなのですね。

で、本書は日本人の海外渡航史の中でもあまり語られていない、
初めてその地に足を踏み入れた日本人について絞って研究された本なんです。
その多くは、漂流など已むに已まれぬ事情で海外での生活を余儀なくされた者ではなく、
自らの意思で海の向こうへ渡っていった者たち。
一旗組から純粋な好奇心で赴いた者まで実に様々。
アメリカ、ヨーロッパからアラブにアフリカ、オセアニア。
明治の世にはほぼ全世界にわたって、そこに日本人がいた。

鎖国をしていた江戸時代でも、結構多くの日本人が海外で居住していたというのも
興味深かったですね。
江戸時代が始まったばかりの頃に山田長政がシャム(タイ)に渡って国王から要職に
任ぜられ、鎖国で帰れなくなってしまった日本人によって東南アジア各地に日本人町が
形成されていたのは有名な話ですが、1613年(慶長18年)頃には、既にペルーの
リマに20人の日本人が住んでいたというから驚きです。
また、当時の時代背景から、奴隷として売買されていた日本人も存在していた
ということはショッキングでした。

今では年末年始などに多くの日本人が海外に出かけますね。
でも、船で何ヶ月もかかる、まさに命がけの航海が必要だった頃にも、
世界へ飛び出していった日本人がいた、ということに感動を禁じえませんでした。
織田信長の時代にポルトガルへ渡ったキリシタン青年、
明治の世に南アフリカで商売に成功した者、
アラスカに渡ってイヌイットとして一生を終えた者・・・
日本人として初めてアラビアの砂漠を縦断し、東南アジアのジャングルをすすみ、
ニューカレドニアに居住した人たち。
全て100年以上も前の出来事だというのが凄い。

自分の可能性を信じ、同胞が全くいない場所で文字通り裸一貫からのスタート。
言葉も習慣も異なる場所での生活は壮絶ですが、読んでいて勇気ももらえました。

日本は島国なので、『島国根性』とか『ムラ社会』などと言われたりもしますが、
かえってそのことにより、他の民族よりも外に目が向いているのではないかとも感じました。
かつてご先祖様がユーラシア大陸を東へ東へとすすんでいったように、日本人のDNAには
そういう『冒険心』が刻まれているのではないかと。
ここではないどこかへ。
見果てぬ天地の先には何かが待っている。
そんな希望を胸に海を渡っていった先達の栄光と挫折の記録は、
正月に読むに相応しいものでありました。
なんだか私も頑張らなきゃ、と思わずにはいられませんでしたね。

そうそう、本書を読んで思ったのですが、
東南アジアやアフリカでの『日本人第一号』を調べていくと、
多くの場合は『からゆきさん』に突き当たるようです。
明治初期には既に世界中にいたらしい。

   かつて新大陸をのぞく世界の売春地図は、
   日本人の娼婦とフランス人の娼婦とで二分され、
   その境界線はウラル山脈からスエズ運河を経て、
   アフリカ東岸にいたる線であったといわれる

今でも各地に『からゆきさん』の墓があるようですが、
その墓に刻まれた没年は10代や20代の者が少なくないそうです。
今では若い女の子の海外一人旅なんて珍しくもないでしょうが、
100年以上も前に、家族を養うため『醜業』に就かざるを得なかった
これら日本人女性のことを思うと、ちょっと悲しくなりましたが、
そのガッツには敬服しました。

とにかく本書は多くの示唆に富んだ労作だと思います。
マジでおすすめの一冊です!


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Last updated  2008.01.04 01:19:47
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