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カテゴリ:本
7月11日、第30回講談社ノンフィクション賞が発表されました。
受賞作は情報センター出版局刊の『あの戦争から遠く離れて』(城戸久枝著)。 (同時受賞は『滝山コミューン一九七四』(講談社 原武史著)、 『マングローブ』(講談社 西岡研介著)) 『あの戦争から遠く離れて』は、先日大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した時に 読んでみました。でも、読み始めてすぐ、発売当時に読まなかったことを後悔しました。 オビにはこうあります。 日中の国交が断絶していた1970年に、文化大革命さなかの激動の中国から 奇跡の帰国を果たした28歳の日本人戦争孤児、それが私の父だった。 『中国残留孤児』という言葉が一般的になるのは、 1980年代初期に当時の厚生省が集団訪日調査に踏み切った後の話。 私が小学生だった当時、さかんにTVで報道されていたのを覚えています。 特に、あるクラスメートが深刻そうな顔をして、 実は親戚のおじさんが残留孤児で、今度家にやってくるんだ。 ということを口にしてからは、なおさらでした。 その10年以上も前に、たった一人で、帰国を果たした人物がいたとは。 日中国交正常化は1972年のこと。 国交もない時期にほとんど自力で帰国出来たというのが不思議でした。 その実の娘が波乱の人生を歩んだ父について語る本書は、 読み進めるうちに、何度も何度も涙がこぼれました。 前半は残留孤児となった父が、いかに過酷な環境で生き抜き、 日本へ帰国していったかを描いています。 涙を誘うのは、いかに中国の養父母(特に養母)が愛情を持って育ててくれたかということ。 温かく接してくれる中国人の親友がいたというのも我がことのように嬉しい。 国家体制としては反目する部分があっても、 日本人と知りながらも血を分けた肉親以上に愛情を注いでくれる人たちがいた。 これも、忘れてはならない歴史の一面だと思います。 後半は、中国に留学することになった著者が、 父を育ててくれた地に触れ、父の足跡を辿るというもの。 反日感情にとまどい、『日本生まれの残留孤児2世』というアイデンティティに悩みつつも、 中国の親族から温かく迎え入れられる場面では、 国家体制やイデオロギーだけで色分け出来ない人と人との繋がり、というものを感じました。 この、リアル『大地の子』ストーリーは、 書き上げるまでに10年かかったというだけあって、実に読み応えのある内容でした。 その10年とは、父と娘が正面から向き合い、 対話することに費やされた10年ではなかったか。 実の父の稀有な人生を、ここまで冷静に書ける人はなかなかいないと思う。 丁寧に丁寧に磨き上げられたノンフィクションでした。 先日の東京ブックフェアの際、情報センター出版局のブースでは、 既に『受賞』の表示があって、大々的に展開してました。(撮影は10日) そこではドキュメンタリー風の映像が流されていて、ひじょ~に気になっていたのですが、 この話はぜひTV化して欲しいなと思いますね。ほんとに。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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