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カテゴリ:本
かつて、オーストラリアの北、木曜島へ出稼ぎに行った日本人たちがいた。
昨日、今日と暑さが戻ってきた。 今までは日焼けとは無縁の生活をしていた分、 天気の良い日はなるべく日に当たるようにしています。 庭か日の当たる部屋で読書する。水分の補給は欠かさない。 それに運動不足を解消することも考え、腕立てしながら読書する。戦う読書。 もちろん腕立て伏せだと辛いので、腕立ての姿勢が疲れたら戻し、また繰り返す。 そしたら腹筋が少し戻ってきた。ような気がする。 体重も10日ほどで2kg減。まだまだいけそう。 走れば良いようなものですが、走る時間があれば読書に充てたい。 いつか読む日もあるだろうと積ん読していたものが意外に多いのだ。 で、積ん読の山から出てきたのがこの『木曜島の夜会』。 いつ買ったのかすら忘れていた。 『木曜島の夜会』 司馬遼太郎 文藝春秋 オーストラリアの北にある小さな島、木曜島。 ここには明治のはじめの頃から日本人が出稼ぎに行っていた。 この海で獲れる白蝶貝や黒蝶貝がヨーロッパの貴婦人たちの胸を飾るボタンとして 高く売れたので、良い稼ぎだったらしい。 面白かったのが、日本人の仕事は主にダイバーとして海に潜ることで、 親方は大抵他国人だったということ。 日本人より深く潜れる者はいなかったし、 日本人よりそれを面白いと考える者がいなかったからだろう。 かつての倭寇も、後半は日本人が戦闘を担い、親方は明人だったという。 金の工面、対外交渉や経営よりも現場仕事を好む民族性。職人気質。 これは分かる。現場仕事は面白くて仕方がないもんな。 そういやウチも職人の家系だった。 ただ、戦争の影がここにも現れた。 この地でダイバーだった日本人たちは、戦争が始まってから皆 オーストラリアの収容所に入れられたそうだ。 そこでの奴隷船なみの扱いに、人種差別的なものを感じずにはおれない。 そして戦後は需要がなくなり仕事もなくなっていった。 高度経済成長期に司馬氏がこの寂れた島を訪れ、かつてダイバーだった 屈強な男たちから話を聞く。それを本にまとめたものがこの作品。 他に短い歴史小説が3篇収録されており、中でも『有隣は悪形にて』が面白かった。 吉田寅次郎(吉田松陰)と富永有隣の話。 二人の関係を、なんとなく『アマデウス』におけるモーツァルトとサリエリに 例えて読んだら余計に面白かった。 尤も吉田松陰は清廉潔白で、富永有隣は悪形だから外見は逆だけど。 才能を持たざる者は、持っている者をただ眺めているのが一番良いのかも知れない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.08.23 15:53:57
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