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カテゴリ:墓場に住みついた元・哲学部教授のことば
[墓石療法 猫療法]
ここやこの近くに住む者たちの前職は、上場企業の部長であったり、国家公務員であったり、家庭の主婦であったりと様々なのだよ。 全員に共通しているのは、金銭問題か人間関係の問題か健康問題、肉体だけではなくて精神の健康についてもということだが、いずれかの問題を抱えていたということだ。肉体か精神のどちらか、それとも両方に問題を抱えていない者など天然記念物に近いわけだし、お金や人間関係の問題も皆無という者なら、ギネス・ブックに登録申請しても良いくらいだね。 ここではじめて見た彼らは一様に、仮面を被っているようだった。表情というものが全く無いのだね。それが今ではどうだい、こんな所で生きているにもかかわらず、あんなに生き生きとした表情を見せるのだよ。 ここには、墓石の群れと猫の群れしかいないのだが、彼らは例外なく癒されているのだね…… 私はそれを『墓石療法』とか『猫療法』と呼んでいるのだが、墓石はものを申さないし猫は鳴くだけだ。それなのに確実に癒されている。 自分が自身との対話を通じて癒されていくのだ。自己催眠療法の一種と言えば良いのだろうかね? ここに来る前は、生活に一杯いっぱいで、人生を生きる余裕が無かった、心や魂というものが無かった、だから病んでしまった。それが、ふたつの療法で心と魂を取り戻したのだ。 普通の、何が普通かはその者の考え方や感じ方次第なのだがね、世間一般で言うところの普通の生活に戻っていった者も沢山いるが、年に1、2度はここに立ち寄ってくれるね。 ここに住む人間たちも、向こうに住む人間たちも、何ら変わりが無いし、いつ生活する場が入れ替わったって何の不思議も無い…… さて、昼寝をすることにしようか。 君、またおいで。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.01.24 15:34:04
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