東京都には監察医務院があって、異常死体の検案をすべて引き受けて行っています。東京23区に住んでいる方は、追加の文書料を除き、無料で検案を受けることが出来ます。
人口1万人につき年間10人ほどの異常死体が発生します。
異常死体の定義については議論があるところですが、1993年に法医学会が出した定義が一般的で、それによれば、すべての外因死と原因が判っていて医療機関にかかっていて亡くなる24時間以内に診察を受けたことのある死者以外のすべての死体ということになります。
異常死体は死体検案書を誰かが書かなければその後の処理が進みませんが、東京都以外では誰が検案をするのか決まっていません。一般の医師は生きている人の診療に忙しく、昼の診療時間帯はもちろん、夜中に呼ばれて検案に行くのを嫌がります。
愛知県では半数くらいの検案を警察医がしていますが、警察医は本来留置人の健康管理と警察署職員の健康管理をするのが仕事で、警察が頼みやすいので頼んでいるだけで、断ることも出来ます。
私は最近フリーランスの監察医として活動しています。蒲郡警察署の警察医を13年ほどしている間はもちろんですが、今でも検案医が見つからないと私のところに電話がかかってきます。最近では碧南警察、岡崎警察、昨日は初めて半田警察からもお呼びがかかりました。
私は現在愛知県警察医会の理事、愛知県医師会警察医部会の幹事をしており、愛知県検視立会医(県警本部長が委嘱)を委嘱されています。日本外科学会、日本乳癌学会、日本内分泌外科学会以外にも日本法医学会に入っていて、日本法医学会の認定する死体検案認定医を持っています。
日本法医学会死体検案認定医認定証 posted by (C)ドクターT
これはかなりハードルの高い資格で次の条件が必要です。愛知県で恐らく初めて採ったのではないかと思います。
第3条 申請者の資格
本制度による死体検案認定医の申請をする者は次の要件、もしくは法医認定医制度認定要件第1項の条件を満たさなければならない。
1)日本国の医師免許証を取得していること。
2)申請時において日本法医学会会員であり、かつ入会以来の会費を全納していること。
3)4年以上死体検案(法医解剖の執刀あるいは補助を含む)に従事し、かつ50体以上の死体検案の経験を有すること。
4)法医学に関する1回以上の学会報告および1編以上の論文(原著、総説、症例、技術報告)又は著書があること。
5)法医学に関する研修を終了し、大学法医学教室あるいは監察医務を行う機関(別表1)の長の推薦があること。法医学の研修については別に定める.
2.前項により申請を行う者は医事に関しそ罰金刑以上、その他に関しては禁固刑以上の刑に処せられていないこと。
昨日も深夜に岡崎まで呼ばれて検案をしてきました。検案が済めば検案書を作成して遺族に検案結果の説明をして検案書を渡してきます。そして常識的な額の検案料(愛知県の平均より安い)を遺族に請求して(ここへ振り込んで下さいという文書を渡してきます)帰って来ます。(通常は病院や診療所に帰ってから検案書を書くので、遺族がそれを採りに行かなければなりません)
年間数十件していますので、もう1000件近く検案をしているでしょうか今年5月の西三医学会で検案について特別講演を頼まれました。