食草から見た蒲郡の蝶のその9はギフチョウを取り上げました。ギフチョウは現在では蒲郡にはいないと考えられています。しかし50~60年前には蒲郡にも生息していました。その証拠は下の写真に載せた標本で、1965.4.22に山崎隆弘氏が五井山で、同日山崎尚之氏が五井山から宮路山の尾根筋で採集したものです。また1970.4.29に高橋 昭先生がやはり五井山から宮路山への尾根筋で1♂を採集してみえます。標本以外の成虫、卵、幼虫、そしてヒメカンアオイは蒲郡市と岡崎市の境界から直線距離にして約4km離れている岡崎市北山湿地で撮影したものです。
ギフチョウ完成図 posted by (C)ドクターT
ギフチョウの食草はヒメカンアオイ(この辺りではスズカカンアオイと言った方がよいかも知れません)ですが、この植物の生育する環境はいわゆる里山で、適当に手を入れられた(木漏れ日の当たる)林の林床に育ちます。昔は何処でも炭焼きをしていましたので、そういう林はたくさんあったのですが、炭焼きが行われなくなって、そのような環境は激減してしまい、それとともにギフチョウも姿を消してしまったのです。保護されている岡崎の北山湿地では林の間伐をして里山の保全が行われているために毎年発生して楽しませてくれます。
ギフチョウ─ヒメカンアオイ分布 posted by (C)ドクターT
残念ながら蒲郡ではそのような場所はなくなりましたが、宮路山の登山道周辺は登山道整備のために適当な間伐が行われており、まだヒメカンアオイが残っています。中には食痕のついているヒメカンアオイもありますので、ひょっとしたらまだギフチョウが生き残っているのではないかと毎年見に行っていますが、今のところは発見出来ません。