時々、朝早く呼ばれて、知多から蒲郡へ行く時に、岡田から阿久比へ向かう道を車で走っていると阿久比の方から岡田に向かって走ってくる小柄なランナーがいました。朝5時ごろのまだ薄暗い頃です。夏はランニングシャツにランニングパンツと言う本格的ないで立ちで、首を少し傾けてゆっくりしたペースで走っています。その人がマスターズマラソンの世界では有名な永井貞雄さんであると言うことを知ったのはまだ最近のことです。
永井さんは1932年富山県の生まれで、中学卒業後鍛冶屋に奉公します。23歳で名古屋に出て、町工場で働きます。その後三菱自動車工業株式会社に就職して、60歳の定年まで働きます。定年後は趣味の絵画、マラソン、俳句などを続け、多くの絵画展、個展にも出品し、マラソン大会もフルマラソンを中心にウルトラマラソンにも挑戦します。そして、70歳、80歳でエッセイ、俳句集「井の中の蛙」を文芸社から出版します。
井の中の蛙 posted by (C)ドクターT
永井さんは毎日休まずに30kmを走り続けました。朝早く、岡田から阿久比に向かって車で走ると必ず出会うのはそのためでした。若い人ならともかく、80歳を過ぎて1日30kmを走り続けると言うのは常人のなせる業ではありません。多くのマラソン大会で年代別入賞をされました。その著書に載っている80歳で詠んだ短歌を少し引用させていただきます。
人生や 早くも八十 長生きで 好きな絵を描き 走る喜び
人生や 井の中いやで とび出して 自然にカエル 生きる幸せ
人生や 好きな絵を描き マラソンと 走り続けて 八十歳に
平成27年12月20日の中日新聞知多版に次の記事が載っていました。
交通事故 posted by (C)ドクターT
◆知多で男性はねられ死亡
19日午前5時40分ごろ、知多市岡田の市道で、阿久比町卯坂、無職永井貞雄さん(83)が軽乗用車にはねられて頭を強く打ち、外傷性くも膜下出血で死亡した。知多署は、自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで、軽乗用車を運転していた・・・・を現行犯逮捕し、容疑を過失致死に切り替え、調べている。署によると、・・容疑者は出勤途中、永井さんは日課のジョギング中だった。市道沿いの歩道は工事中で、永井さんは車道を通行していたらしい。
女房とお祖母さんは「80歳過ぎまで好きなマラソンをしていて、車にはねられてコロッと逝ければ幸せな人だ。貴方もそのうちに、・・・。」と言います。私は90歳、100歳まで走り続けて欲しかったと思います。
この話も星空文庫「レクイエム」で公開中です。