アマミナナフシ1 posted by (C)ドクターT
この昆虫は骨もなければ、筋肉もなさそうです。脳みそも小さそうです。でも食欲はあって、草を食べています。
最近講演を頼まれると「100歳健康法」(100歳まで健康で長生きするコツ)について話をしています。同名の本も執筆中です。今日はその肝を紹介しましょう。日本人の平均寿命は私が生まれた1950年ころは60歳くらいでしたが、 どんどん伸びて今では男で80.79歳、女で87.05歳となりました。今世紀中には100歳を超すのも夢ではありません。でも寿命が100歳まで伸びても、寝たきりで100歳まで生きても、ボケて100歳まで生きても何の意味もありません。元気で(QOLを保ちながら)100歳まで生きるには老化とともに進行するトリプルペニア(オステオペニア、サルコペニア、ニューロペニア)をいかに食い止めるかが問題です。ペニアは減少、オステオは骨、サルコは筋肉、ニューロは神経ですから、オステオペニアは骨量の減少=骨粗鬆症、サルコペニアは筋肉量の減少=運動能力の低下、ニューロペニアは神経細胞の減少=認知症と言うことになります。オステオペニア、サルコペニアと言う言葉はすでに使われていますが、ニューロペニアは私の造語です。それではこの3つについてそれぞれもう少し詳しく説明し、その対策について述べてみたいと思います。
まず最初にオステオペニアです。骨は硬くて変わらないと思っている方が多いですが、絶えず破骨細胞と造骨細胞の働きのバランスによって変化しており、骨に負荷のかからない宇宙空間などでは急速に骨量は減少してしまいます。骨量の減少した年寄りで多いのは大腿骨頸部骨折と脊椎圧迫骨折で、 いずれも寝たきりの原因となります。骨量の減少を防ぐにはカルシウムの摂取も重要ですが、適度の運動と活性型ビタミンDを作るために日に当たる必要があります。
次にサルコペニアですが、筋肉量の減少によって、若い頃に出来たことがだんだん出来なくなり、最後は椅子から立ち上がることも出来なくなってしまいます。筋肉も負荷をかけることによって、細胞の数は増えませんが筋肉線維を太くすることが出来ます。最近IGF-1(筋肉若返りホルモン)の働きが判り、アルギニンと言うアミノ酸の多い食事(肉・卵類、大豆製品)を摂取し、食事をゆっくり食べることにより、肝臓からのIGF-1の分泌が増えて、それが多い状態で運動をした方が筋肉量がより増加することが判って来ました。運動だけでなく、食事の内容、食べ方も重要であると言うことです。
最後にニューロペニアですが、神経細胞は20歳を過ぎると減り始め、短期記憶の障害から始まって最後は何も判らない、考えられない認知症の最終形態が完成します。最近運動能力がまだあるのに認知症の老人が交通事故を起こすケースが問題になっています。神経細胞の数の減少は止めることが出来ませんが、使っていない神経細胞はたくさんあるので、新しいシナプス(神経連絡)を造ることにより認知症の進行を抑えることが出来ます。それには頭と体の各部を使うこと、五感への刺激を絶えず与えることが重要だと言われています。
ついで採れたての嬉しいニュースです。
左党には朗報かもしれない。認知症の中で患者の多いことで知られるアルツハイマー病の予防に、ビールやノンアルコール飲料に含まれるホップ由来の苦み成分が効果を発揮するというのだ。飲料大手のキリンと東京大、学習院大の研究チームが解明した。12月の日本認知症学会学術集会で発表される。
キリンによると、ホップ由来の苦み成分「イソα酸」に、脳内の免疫細胞「ミクログリア」を活性化させ、アルツハイマー型認知症の原因物質とされている「βアミロイド」を除去する作用がみられた。
アルツハイマー型認知症のマウスを使った実験では、イソα酸を含んだ飼料を食べたマウスは脳内の炎症緩和が確認された。その結果、イソα酸に、アルツハイマー型認知症の進行を抑制する効果があることが示唆されたという。