逮捕されたASKA容疑者が不起訴となり、歌手のASKAさんに戻った。任意で採尿した尿から覚醒剤の陽性反応が出ていながら、何故かと疑問をお持ちの方も多いでしょう。
私はかって警察医を10年あまりしていて、容疑者の強制採尿を頼まれたことも何度かあり、かつまた、スポーツドクター、DCO(ドーピング・コントロール・オフィサー)として競技会検査に立ち会ったことが何度かあります。その経験を元に言うと、採尿の際にASKAさんがあらかじめ用意していたお茶を入れたと言って、容疑を否認した時点ですでにアウトです。警察は確かにASKAさんから採尿した尿であることを証明しなければなりません。それが証明出来ないような採尿の仕方では不起訴となっても仕方ありません。すぐに強制採尿をやり直せばまだ結果は違ったかも知れません。
今まで、ドーピング検査に立ち会っても、それをブログ等に載せないことと言われていましたので、封印していましたが、すでに10年以上前のことですし、ドーピング検査の手順を載せる分には差し支えないでしょう。
ドーピング検査 posted by (C)ドクターT
ドーピング検査はこのマニュアル書に書かれている手順に従って行います。
ドーピング検査 posted by (C)ドクターT
通常はホテルの1室を借り切って行います。 ドーピング検査の対象となった選手とその付き添いと検査員二人が向かい合って座り、まず本人に採尿の容器などを選ばせます。対象となった選手がインチキをするばかりではなく、その選手よりも下位の選手を繰り上げさせるために金で買収された検査員がその選手を陥れる可能性もあるからです。容器には全て封がしてあり、検査員も選手もインチキがないことを確認する必要があります。そうした正規の手順を踏めば、お茶を入れたなどと言う言い訳も出来ない訳です。
ドーピング検査 posted by (C)ドクターT
選手は競技後で口が渇いていますので、水やスポーツドリンクも渡しますが、それはこちら側が準備した封の切ってないものを渡します。
かってオリンピックでもインチキをするために使われた道具です。あらかじめ他人の尿を入れたバルーンを隠し持っていて、さもおしっこをしているふりをしてバルーンの中の尿を採尿容器に入れる訳です。そうしたインチキをさせないために横あるいは前から見て、体の中から出ていることを確認しなといけない訳です。
女性の対象者の場合はもちろん同性の検査員が立会います。 結局今回の場合は、白黒をつける前に採尿手順に問題があって、判定出来ないと言う訳です。