SMA症候群の臨床3─検査(UGI)
SMA問診票で10点以上となると次のステップの検査へ進みます。この疾患は血液検査ではまず異常はありませんので、SMA症候群の確定診断をつけるのは画像診断です。画像診断には上部消化管透視(UGI),腹部エコー検査、腹部CT(単純・造影)があります。いずれの検査でも確定診断は可能ですが、SMA症候群の病態に沿って、病変をあぶり出すテクニックが必要となります。まず最初にUGIについて述べます。通常のUGIですと、前処置として前日の夜9時以降の絶飲食を指示するのですが、SMA症候群が疑われる場合は胃からの排泄が悪い訳ですから胃の中を空虚にするには24時間以上の絶飲食が必要となります。またUGIの前に蠕動を止めるためにブスコパンを注射してはいけません。最初に十二指腸に入ったバリウムの流れを見ます。そのために必要なバリウムはほんの一口か二口で十分です。もちろん胃に病変がないかどうか見るためにそれだけの量のバリウムを飲ませたあとに発泡錠は飲んでもらいます。それで十分体位変換をしてもらいまず胃の二重造影をします。その時点で十二指腸にも少量のバリウムと空気が入りますので、そこで十二指腸の動きと輪郭を見ます。ここで十二指腸下行脚の拡張や過蠕動所見が得られます。そしてここでブスコパンを注射して十二指腸の動きを止めます。すると十二指腸下行脚の拡張はさらに強調され、水平脚が線状に圧迫されて途切れる所見が得られます。このような所見が得られたら、SMA症候群と確定診断してよいと思われます。ところで私は乳腺内分泌外科を専門としていましたが、消化器外科もしていてUGIや胃カメラも自分でして自分で読影していました。最近の若い外科医は放射線科や消化器内科に検査を依頼して報告書を見るだけと言う医者が多いのは嘆かわしいことです。UGIに関しても出来るだけ患者さんの負担が少なくなるように心がけていました。ある時自分が蒲郡の保健センターで人間ドックを受けることになり、最後にUGIがありました。若い女性の技師さんが担当でしたが、最後にコップ一杯の美味しくないバリウムを飲まされて充盈像を撮ります。その時バリウムが流れてしまったので、もう少し追加でバリウムを飲んで下さいと持って来ました。それで私はプツンと切れて『技師長を呼べ!』と言ってしまいました。例の『料理長を呼べ!』と言って料理に文句をつけるやつです。『君たちはスクリーニング検査である人間ドックのUGIで何故コップ一杯以上のバリウムを飲ませる必要があるんだ。患者さんの負担を考えたことがあるのか?』と言い放ちました。技師長が飛んで来て謝り、替わって検査をしてくれましたが、それ以来私はブラックリストに載ったようでいつも技師長が担当するようになりました。次に続く。