しんさいニート [ カトーコーキ ]
それでも、生きていくために。虐待、父の死、3.11の被災と故郷の喪失、強烈な自己否定、うつ病……。悩んで悩んで悩みまくった男が辿りついたのは、“しんさい"をきっかけに溢れ出た、己の「膿み」を描くこと。──誰からも必要とされず、社会にとって有益なものを何ひとつ生み出せない、非生産的な自分の存在が、とても情けなく許せなかった。情けないという思いに、ボクは幾度となく涙を流した──(本文より)。
久しぶりに図書館へ行ったときに、新刊コーナーにあったこれを手に取りまして。
最初、『しんさい』って言葉の意味を勘違いしてまして。
”震災”じゃなくて、”新採用”のほうの『しんさい』だと思ってたんですよね、なぜか。
いや、何故かって言うか、今春長男が新社会人になったのでね。
その影響もあったのかなとは思いますが。
東日本大震災で被災した方の、リアルな現実というのか。
いや、この作者のカトーコーキさんは、それを描きたかったわけじゃないとは思うんですけどね。
勝手な私の解釈ですが。
子どものころ父親から受けた、威圧的な教育のせいで、自己肯定が出来ない作者さん。
その地獄のような闇から抜け出すために、描き始めた漫画なんでしょうね。
この本を読んで衝撃的だったのは、被災者の中に『これ以上の幸福を感じていいんだろうか。』という感情が生まれてしまうということ。
なるほど…
周りでは沢山の方が亡くなって、その中で生き残った自分に、その価値が果たしてあるのかどうかと考えてしまう。
生きているだけでもありがたいことなのに、ファッションに興味を持ったり、音楽を楽しんだりといったことをしてもいいんだろうかと悩んでしまう。
自分に原因があるわけじゃないのにね。
たまたまその土地に住んでいただけなのに。
そんな悩みを抱えていかなきゃいけないなんて。
世の中の理不尽さに、気付かされる一冊でした。