燕は戻ってこない [ 桐野 夏生 ]
内容紹介(出版社より)
【第57回 吉川英治文学賞受賞作】
【第64回 毎日芸術賞受賞作】
この身体こそ、文明の最後の利器。
29歳、女性、独身、地方出身、非正規労働者。
子宮・自由・尊厳を赤の他人に差し出し、東京で「代理母」となった彼女に、失うものなどあるはずがなかったーー。
北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ……。
『OUT』から25年、女性たちの困窮と憤怒を捉えつづける作家による、予言的ディストピア。
桐野さん、久しぶりな気がします。
桐野さんの本は、気合を入れて読まないと引っ張られることが多いので(あくまで私がですが)、ちょっと持ち上げては置く…的なことを繰り返してしまったのですが。
あっという間に読んでしまいました。
これも、何日もかかって書き上げた本に対して、失礼かなーと思ったりしますけどね。
けど、お休みだった昨日。
一日で読んでしまいました。
凄いな。
流石だな。
っていうのが、まず思ったことで。
桐野さんって、現代社会の問題を表現するのがとてもお上手だと思うのですが。
これもねー。
まさしく!といった感じでした。
地方出身…って、もろ私が住んでるとこの近くだし(笑)
私は未だに地方住まいですけども。
この辺からして、共感せずにはいられないというのか。
非正規労働者。
女性。
独身と29歳というのはちょっと違いますけどね。
この非正規労働者、地方出身者、女性。
やっぱり格差を感じてしまいますよね。
世の中は、都市を中心に回っていて、金を持っている人のことだけが考えられていて、男性優位な仕組みはなにも変わっていないんだな、というのか。
これは、どうにもならないことなんでしょうか。
最近、「私の存在意義とは…」的なことをどうしても考えてしまって。
それを知り合いに話したら、「息子二人を育て上げただけでも、立派な存在意義じゃない?」と言われて、うーん…と考え込んでしまって。
どうなんですかね。
それって、リキの言うところの『子産みマシーン』と変わらないんじゃ…なんて思ったりして。
裕福な、子どものいない、子どもの出来ない夫婦のために、お金を得るために子どもを産む。
すごいエゴイズムだと思うんですけど。
需要と供給とか、そういうもので収まる話じゃない気がします。
なんていうか。
お金持ちは、生まれたときからお金持ちで。
そこを変えることなんて、容易には出来ない世の中が、どうにも気分を憂鬱にさせます。
お話のラストは、どこか楽観的に感じたりもしますが、あのまま上手くいくわけはない気もします。
そこを書かずに終わらせるのも、桐野さんらしさが窺えるお話でした。