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テーマ:山登りは楽しい(12246)
カテゴリ:登山
夕べ気象通報を聞いて付けた天気図は、太平洋高気圧はあいかわらずアリューシャンのあっちにあって変わっていないが、日本付近の等圧線が前日より混んできていた。
風が強くなる知らせだったのだろうか。 荒川小屋を5時前に出発し、大聖寺平の稜線に出る手前から、爆風烈風直撃ぶっとび状態になった。 今日の本来の予定は、南アルプススペシャル超だらけモードで、荒川小屋を出て赤石岳ピークそばの避難小屋まで、予定行動時間2時間半である。 避難小屋着いたら、日が暮れるまで南国よろしく日向ぼっこをやり、夕方は心清らかに夕日を眺め、日が沈めば満天の星空を健やかに満喫し、翌朝富士山の隣から昇る朝日に信心深く涙するという、登山者ならではの超豪華メニューてんこ盛りなのである。 ただ頂上の避難小屋は水が不足しているらしい。そのため、ザックには今晩の晩飯と明日の朝飯用に2.5リットルの水を余分に積んでいる。 重い。 さらに追い打ちをかけるように、稜線は爆風。さらに雨。 景色どころではない。ザックが風で振られるほど。 小赤石岳、なんも見えん。 赤石小屋分岐でザックをデポした。 決めた。 赤石頂上泊はやめて、本日赤石岳ピストンの後、椹島まで一気に下山だ。 自分で付けたええ加減な天気図でも天候回復の兆しが無い。 赤石岳のてっぺんに今夜泊まっても展望無ければおもしろくない。 よし、せっかくここまで担いだ水だけでも小屋に届けよう。 避難小屋には水が無い、そう荒川小屋にも張り紙がしてあったし。 ということでサブザックに2.5リットルの水を積んで赤石岳ピークへ。 20分ほどで、赤石岳ピークへ。 3年ぶり、遂に戻ってきた。 3年前は両足靴擦れがずる剥けで歩くことさえしんどかった。 そしてしんどかった分、一番思い出深く、大好きになった赤石岳に戻ってきた。 下山後間もなく44歳になるおっさん一人で、またジワ~っときてしまった。 だが、なんも見えん。 でもなぜだが、心晴れやか、満足しきりなのである。 赤石岳避難小屋の小屋番さんに水を託し、即下山へ。 赤石岳8:30発。 ガイド本の赤石岳から椹島までのコースタイムは約6時間。休憩無しでコースタイム通り歩けば、14:30分に椹島に着くことになる。 椹島から畑薙ダムへの最終バスは14時発。 本来なら間に合わないのだが、下りだけはコースタイムより早く下れるので、うまくいけばバスに間に合うかも。 デポしたザックを担ぎ直し、椹島へ激下りの始まりである。 といっても、雨降ってカッパ着てるし、地面も滑りやすくなってるし、富士見平までは狭く危なっかしい箇所もあるので、そんなにペースを上げられない。慎重かつ慎重に。 赤石小屋に11時着。 バス発車まで3時間。小屋から椹島までのコースタイムは3時間半。 膝がもてば、十分縮められる。 でもこれからが長い。 ある程度膝に負担をかけない歩き方はできるようになった気はするが、それでも大腿筋がプルプルし始めている。 無理せずゆっくりあせって急ごう。 唯一の救いは、赤石小屋で雲を抜け、カッパを外すことが出来た。 すでに汗で全身ぬれぬれになっていたので、カッパを脱いでかなり動きが楽になった。 樺段を過ぎると、椹島の気配が感じられる。 ロッジの屋根が見えたり、車の走る音が聞こえたり。 と言ってもここからが長い。足も油の切れたロボコップ状態となり、スムーズに動かせない。 これはぎりぎりになりそうかな、最悪、椹島にもう1泊してもいいじゃん、でも間に合えばバスに乗りたいなあ、と葛藤が続く。 ギーガシャン、ギーガシャン、ロボコップ歩きで必死に下る。 下りなのに、汗も吹き出し、呼吸も乱れる。 やっぱだめかな、と思ったが、13時45分、無事、椹島下山。 間に合った。 赤石岳ピークから2,000m一気に激下り。 「はぁ、はぁ、な、な、生ビールください。」 「バス、2時発ですよ。飲めます?」 「大丈夫です。一気にいっちゃいますから。」 「ではお待ちください。」 琥珀色に輝くジョッキに満たされたビール。 バスに間に合うと分かれば、もうこれしかない。 「えっ、もう飲んじゃったんですか!!」 胃袋に、血管に、そして心にきっぱり染み渡る生ビールなのである。 ・ガイド本の歩行時間 8時間45分(山と高原地図) ・俺の歩行時間 7時間16分(休憩を除いた実質歩行時間) ・俺の行動時間 8時間55分(休憩を入れた時間) 3年前、聖、赤石に登った時、向こうに見える荒川三山にテント担いで登りたいと思った。 それから2シーズン、仕事の予定と夏山のベストタイミングとがかみ合わず、涙を飲んだ。 そして今夏、3年ぶりに南アに戻ってこれた。 天気がもひとつだったため、超のんびり行程の予定のはずが、ごく普通の行程とはなったが、それでも満足。 山、やめられないなぁ。 無事椹島から奈良の自宅に戻り、浴びるようにビールを飲みながら、頭の中でもう一度今回のコースを歩き直し、次はどこを登ろうかと思いを馳せる、清く正しい真夏のひとときなのである。 「とうさん! 帰ってたの!」 ビールブリザードに見舞われ、リビングのフローリングにパンツ一丁で意識を失ってしまった俺を、遭難者捜索のため、明け方寝室から出てきた家内が偶然発見してくれたお陰で、俺も富山出張から4日ぶりにようやく布団に入ることができた。 こうして、俺の夏山も無事、幕を閉じたのであった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年09月26日 00時50分07秒
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