羂索

もとから僕の精神は弱い。
気が弱い。

ある日の仕事での出来事。僕を入れて、もう一人アルバイトと責任者、三人の
仕事だ。
別に大変ではない仕事だが、僕の責任者が
その仕事に対して自信が無いためか、異様なほどいらだっていた。

その人と一緒に仕事をしてるとしんどいので、早々と
違う仕事を作って、その場を離れることにした。
現場に残ったもう一人のアルバイトは
なんら悪いことをしていない、ミスをしたわけではないのに、
怒られる。もうこれは単なる言いがかりだった。
ストレスの解消に使われているだけだ。
いつも優しいバイトの人だが、この日にかぎっては相当に責任者に対して
怒っていた。
仕事が進むにつれ、ギスギスが最高潮に達し、
責任者は一方的に怒鳴り散らしていた。
バイトの人もハラワタ煮えくり返りながらもジッとこらえていた。
嫌な空気が充満している。

現場には居なかった僕にはその怒りのベクトルは
向かってこないので気分的には楽だが。

その二人はいつもは一緒に食べる昼飯も食べに行かない。
険悪な雰囲気が張り詰めている。

僕の職場は昼休憩、車の中で昼寝をする。
僕はその二人の怒りを車内でも感じたのか、
どうも落着きなく、眠ることが出来ない。

すると、責任者の方はグーグーといびきまでかいて眠り出した。
このやろ！お前のせいで眠れないのに！

その数分後。
怒られていたバイトの人もグーグーといびきをかきはじめた。
ええ！あんたまで寝れますの！

結局、全然当事者でない僕が、一番気を張っていて、眠れなかった。

タフになると言うことは、どこでも寝れると言うことなんだな。
と思うと同時に、
俺って気が小さいなあと、改めて感じた。