カテゴリ:読書
こんな本を読んだ。
麻耶雄嵩 『神様ゲーム』 島田荘司 『アルカトラズ幻想』 ========== 麻耶雄嵩『神様ゲーム』 麻耶雄嵩氏の小説を普通の人に勧めることは怖くて出来ませんが、私自身は文庫化された氏の小説は全部読んでいるので、どんな驚きの結末が待っていようと、世界が壊れる気分を味わおうと、覚悟はしていたつもりでしたが、それでも、この小説のラストでは、疑問と混乱の渦に巻き込まれました。 「神様」は正しいとするのか、間違いもあると考えるのか、「真実はいつも一つ」なんて無邪気に言える探偵が羨ましい。 殺された猫はシュレディンガーを意図しているのか。 開けた先に、背徳と混沌が詰まっているという悪夢のびっくり箱。 読んで、決して幸せな気分になどさせてはくれませんが、小説を読むという行為だけで、自分の持っている世界観をガラガラと壊してくれる麻耶雄嵩体験は、他の小説では得られない唯一無二のものです。 とりあえず、何が間違いかと言えば、この作品が子供向けのミステリーレーベルで刊行されたということ。 『神様ゲーム』で初めてこの作者に出会った読者は、どこへ放り出されるのだろうと心配になります。 ちなみに、氏の数ある作品の中で勧める本を選ぶなら、ノンシリーズの『螢』か『隻眼の少女』。 どちらも、もちろん、幸せな気分なんかにはさせてくれない、その代わりに、世界が崩壊する気分が味わえる、素晴らしい作品です。 『螢』 『隻眼の少女』 ========== 島田荘司『アルカトラズ幻想』 解説の伊坂幸太郎氏をして、「僕には書けない」と言わしめる快作。 冒頭の酸鼻極まりない残虐な事件の発生から、恐竜の存在についてあっと言わされる「重力論文」、難攻不落のアルカトラズをめぐる脱走劇、そしてファンタジーとしか思えない「パンプキン王国」での生活、何を読んでいたか分からなくなるほど急な展開を見せる物語を、最後のエピローグでまとめ上げる鮮やかな手腕は、さすがの一言。 それにしても、どうなんだろう「重力論文」。 説得力がありすぎて、古生物学にこのまま一石を投じて欲しい程なのですが。 「恐竜」に興味のある人は、この章だけでも読む価値十分あり。 かって、松本清張氏や高木彬光氏が、古代史学に投じた一石、いや、哲学者の梅原猛氏の古代史学に対する業績に匹敵するぐらい、あと数年後には、古生物学のスタンダード学説になって、図鑑から何から書き換えてしまう可能性のある「論文」です。 「宇宙」に興味がある人も読む価値があります。 文字通り、宇宙規模で考えての、地球をはじめとする太陽系各惑星の自転周期の謎について、こんなに分かりやすく語られている本はありません。 「人類の進化」に興味がある人も、読むと面白いでしょう。 何故、どのような進化があって、哺乳類の中で人間は単独で子供を産むことが難しくなったのか。 納得のいく答えがここにはあります。 もちろん、他の章もそれぞれ魅力に満ちた展開を見せ、まさに「巻を措く能わず」。 とにかく、とんでもない作品であることは間違いなく、これぞエンターテインメント。 島田先生の作品力に改めて脱帽させられた読書体験でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 18, 2015 09:11:39 AM
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