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カテゴリ:日替わり日記
「正邪」と「好悪」と「勝負」の峻別 ウクライナ危機に関して議論をしていると、本当に暗澹たる気持ちになる。こんなにも「戦争」や「和平」の基本的なことを理解していなかったのか、「正邪」と「好悪」と「戦争の勝ち負け」の違いもわかっていなかったのか、と天を仰ぎたくなる。 まず、ほとんどの人は、「武力で他国の領土を侵略することは許されない。それが事実でそれが最後だ」という議論で終わる。呆れるくらいそのレベルで終わってしまう。そんなことは小学生でもわかる。その程度の単純な議論で終わるのであれば、戦争は起きないだろうし、武器も必要ないだろう。 ロシアはウクライナを侵略した。したがって、「邪」であり「悪」である。 そのとおりだ。そこに議論の余地はない。 その人たちに聞いてみたい。米国は、イラクを侵略した。米国が侵略の大義名分としていた大量殺戮兵器の存在は大噓だったとわかった。ならばなぜ、日本は米国を非難しないのか? なぜ、米国の大統領を戦争犯罪人として裁かないのか? 答えは簡単だ。米国は強くて、裁くことができないからだ。 そのとおりだ。そこにも議論の余地はない。 つまり、「正邪」で他国を裁くことはできない。他国を裁くことができるのは「力」だけである。「力」こそが「正義」であり、「勝者」が「正義」を語り歴史を綴るという厳しく汚らしい現実がある。無論、その「力」の中には、「軍事力」だけでなく、「外交力」や「経済力」のほかに、「善悪の価値観」も含まれるが、世界には「正義」がひとつあるわけではなく、複数個あるというのが現状である以上、その「正義」を決めるのは「軍事力」を含む「力」であるという現実は否定しようがない。 その現実を理解した上で、悲惨な戦争被害を最小限にするためには、「戦争」が始まったら、できる限り速やかに「和平」を実現するしかない。そして、「和平」を実現するためには、敵方の「正義」も理解した上で、互いに妥協しながら、「停戦」を合意し、その合意を履行する仕組みを作るという手続が必要だ。 ところが、ここの大事な部分が日本人には完全に欠落している。ロシアの立場や考え方を語ること自体が、「お前はロシアの味方か?」「お前はプーチンが正しいというのか?」という極めて次元の低い「好悪」の議論に堕してしまう。それで、議論をシャットダウンしてしまう。ジエンドだ。そういう議論のスタンスは、じつは「和平」を拒否するということを意味する。敵方の「正義」をまったく理解しようとしないのだから、歩み寄る余地がない。いまの米国のように、ロシアとの交渉を断るやり方だ。 このスタンスを続けるのであれば、どちらかが全面降伏するまで「戦争」は続く。その間に死傷者は増える。無辜の市民の犠牲も増えていくだろう。しかし、そのスタンスを選んだのであれば、「市民がかわいそうだ」などと述べる資格はない。なぜなら、「和平」を拒否するスタンスを堅持している結果なのだから。 そうなれば、どちらかが倒れるまで血みどろの戦いを繰り広げるしかない。何らかの拍子で、米国が参戦することとなり、第三次世界大戦を勃発させ、日本も巻き込まれてしまう核戦争が勃発する可能性すらある。しかし、それも仕方がない。「和平」を拒否するのだから、行くところまで行くしかない。 その結果として、ロシアが中国と北朝鮮と組み、日本本土に攻撃を仕掛ける可能性だって否定することはできない。北朝鮮が核ミサイルを沖縄の米軍基地に打ち込み、中国が尖閣と沖縄を、北朝鮮が韓国を、ロシアが北海道に侵攻するという三正面作戦を強いられても仕方がない。「和平」を拒否するのだから、日本も、ロシアと中国と北朝鮮という三ヶ国の侵攻に対して、ウクライナの勇者たちのように全員が死ぬまで戦うしかない。 仮に第三次世界大戦に発展しない場合であっても、今回、プーチンが経済制裁に困窮して「ごめんなさい」と謝る可能性は皆無に近いので、「和平」を拒否するのであれば、バイデン政権が狙っているように、プーチンが失脚するまで、日本政府は「米国に囁かれたかつてのウクライナのように、経済制裁でロシアを挑発し続ける」のだろう。プーチンは「今回の経済制裁は宣戦布告だ」と明言した。どこかで、ロシアのレッドラインを超える経済制裁を続けたことによって、ロシアが日本の領土を脅かしたとしても仕方がない。「和平」を拒否するのだから。 ロシアが北海道を脅かし、同時に中国が動いて、尖閣や沖縄を侵食しても、米軍が日本を守ってくれるとは限らない。今回のウクライナと同じ立場に置かれる可能性はある。ロシアも中国も核を持っており、米軍が直接戦うことは、第三次世界大戦に発展しかねないからだ。それに、バイデン大統領は「自国が戦わないのに、米兵の血は流せない」と明言しているから、自衛隊や日本の市民が大量の血を流さなければならない。それも仕方がない。「和平」を否定するのだから。 そういう帰結が嫌なのであれば、個人的には大反対だが、先手を打ち、この戦争を止めたくないと思っている米国を煽って、ウクライナ戦争への米軍の参加を誘い、自衛隊も後方支援に従軍すべきなのだろう。モスクワを急襲して、プーチン政権を打倒するまで、戦線を拡大して、世界規模で戦争を続けるべきだろう。北海道が戦火で焼かれようが、東京にミサイルが飛んでこようが仕方がない。中国や北朝鮮からミサイルが飛んできても仕方がない。 だって、これは「正義の戦い」で「善なる戦い」なのだ。「絶対悪であるプーチンを打倒する聖戦」なのだから、プーチンが平謝りするか、プーチンを降伏させるか、プーチンを殺すまでは終わることができない。プーチンは狂っており、世界を破滅に導こうとしているのだから、その狂人との「和平」などはあり得ない。「世界で唯一の正義の軍隊」である米軍とともに自衛隊と日本人は、ウクライナを救うために、日本のすべてをリスクにさらしたとしても、ウクライナを支持するべきだ、ということになるのだろう。 私は、そういう考え方にはとてもついていけない。まっぴらごめんだ。万が一、そうなったら、「ロシアは悪だ」「プーチンは嫌いだ」というレベルで思考停止して「和平」への道を閉ざしてきた人たちは、必ず戦争の最前線で戦ってほしい。まさか、そうなったときに、「ロシアが日本の領土に攻め込むのは悪い」と主張して戦争の最前線から逃げるつもりではないと思うが釘を刺しておきたい。あれだけ、ロシアを罵倒し、プーチンを悪魔のように断罪したのだから、逃げるのは卑怯だろう。 米国から吹き込まれたとおりに、ロシアを挑発する発言を続ける自民党の議員たちの勇ましい発言を聴いていると、「どこまで米国の言いなりなのか」と眉を顰めたくなる。本人は「有事のときに米軍に助けてもらうためには、ここで恩を売っておかないとダメだ」ということで愛国心からやっているのだろうが、米国はそういう貸し借りは覚えていない。明日には忘れているだろう。 首輪を付けられて主人の言いつけどおりに吠える犬は、主人にとって、所詮一匹のペットにすぎない。そして、犬が主人の行動を決めることはない。要らなくなれば、捨てられて、他のペットの餌にされるだけだ。日本の運命がそうでないことを心から祈る。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.05.23 13:49:35
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