『おくりびと』
モントリオール映画祭で賞を獲って以来、各方面で絶賛されていたので、ぜひ見てみたいと思っていた。やはり噂に違わずなかなか良い出来で、見終って胸がいっぱいになった。勘違いから飛び込んだ、全く想像もつかないような職業。最初は不本意で戸惑いながらも、次第次第に自らの中に職業意識に目覚めていく、そんな青年の役にモックン(いまだにこう呼んでしまうな~)はピッタリハマっていたように思う。脇役陣も素晴らしいが、特に笹野高史がいい味を出していた。とにかく何もかもが「美しい」。凛とした全体の雰囲気の中に、たくさんの「美しさ」がちりばめられている。納棺師の所作のひとつひとつはもちろんのこと、チェロの音色、衣擦れの音、安らかな故人の顔、山形の豊かな自然の風景.......。そして何より、人間の死に直面してその旅立ちの手助けをする、納棺師をはじめとする葬儀に関わるすべての職業。かつて歴史の上では、「死」=「穢れ」という価値観から、被差別民に押し付けられていたこともあったが、これらの仕事こそ、崇高で美しいものと感じさせる映画だ。とてもシリアスなテーマの中、ところどころクスッと笑わせる「隠し味」も忍ばせてあり、全体的にあまり重苦しくならないように作られている。奇しくも今回も出演していた山崎務がかつて出ていた『お葬式』という映画と、よく似たテイストがあるように思った。