『平清盛』の楽しみ方
今年の大河ドラマ『平清盛』が、低視聴率に喘いでいるという。まあ、ある程度予想されたことではあるが。というのも、大河ドラマの人気には傾向があって、一般的になじみの深い時代を扱ったものの方が、押しなべて視聴率は上がるからだ。例えば、戦国時代、忠臣蔵、幕末.....このあたりが定番かな。これらがストライクゾーンど真ん中であれば、源平の合戦の時代は、ちょっとボール臭いギリギリのストライク、というところだろう。しかし平清盛の生涯は源平の合戦以前に終わってしまっているので、これはどう見てもボールだ。しかも滑り出しの今の時期は、そこから更に遡るので余計に馴染み薄く、もうワイルドピッチ寸前なのである。ネットの評判などを見ても、途中で観るのを止めてしまった人の何と多いことか。しかし私は毎回非常に楽しみに観ている。天の邪鬼と言われればそれまでかもしれないが、今まででも私の大河に対する興味の度合は、概ね世間の視聴率とは反比例の関係にある(笑)。なんといっても私は、今まで扱われたことの無い時代背景、地方などに惹かれるからだ。そういう意味では今回は、「ど」ストライクだ。大河ドラマが他のドラマと一線を画しているのは、「筋書きの分かっているドラマ」だということだと思う。どんな売れっ子の脚本家がペンを執ったところで、織田信長は本能寺で襲われて自害するし、大石内蔵助は吉良邸に討ち入るし、坂本龍馬は薩長をくっつけた末に暗殺される。これは絶対に変えられない結末だ。筋書きが分かりきっている以上、そのドラマの見どころは「視点」、「演出」、そして役者の「演技力」、このあたりになってくる。それらが今回の「平清盛」の場合、相当不評のようだ。ただ視点を変えれば、まったく馴染みの無い時代だからこそ、筋書き自体が多くの人には分かっていないわけで、それゆえに「ストーリーがどう転がっていくのか」という楽しみはある。そして時代考証や演出の面でもまた、未知の時代のものは新鮮味がある。まあ要はいろんな楽しみ方がある中で、単に視聴率というたったひとつの指標を拠り所にして、マスコミがネガティブ気味に報道していることの方に、非常に違和感を感じているわけだが。