旨い酒か、雰囲気か
地味ながら結構人気の高いのが、BS-TBSで放映されている「吉田類の酒場放浪記」。私も時折見ているが、なかなかに雰囲気の良い番組だ。ちょうど私の友人に、仕事であちこちに出張する機会の多いヤツがいるのだが、無類の酒好きである彼は、宿泊先で自分の嗅覚を最大限に活かして、この番組に出て来るような渋い居酒屋を探しては歩いているらしい。まさに“リアル酒場放浪記”だ。仕事で出張、など望むべくもない私にとっては、うらやましくて仕方がない。さてこの番組に出て来る居酒屋は、どこも足を運びたくなるようなところばかりだが、見ていると押しなべて、酒そのものにはあまりこだわってないようにも見える。いわゆる普通酒、もっと言えば、お品書きに銘柄名を載せずに、「燗酒」とだけ書いている、そんなノリのところ、といえば実感していただけるだろうか?だが私はこのところ、飲む酒は純米酒オンリーで、外飲みの時も純米酒を選んで飲んでいる。ただ断っておくが、私は「アル添酒など日本酒とは認めん!」といったような、バリバリの“純米酒至上原理主義者”のような立場にいるわけではない。よほど造りが粗悪なものを除けば、アル添酒もアリだと思っている。ただ私自身の体質なのだと思うが、アル添酒だとあまり量が飲めないだけのことなのだ。純米酒が飲みたければ、必然的に日本酒の品揃えの良い店に行かなければいけない。しかし「酒場放浪記」的な店の雰囲気は捨てがたい。このふたつが両立している店なら文句はないが、案外と無いものだ。私も地元を見回しても、両立している店はこれと言って思い浮かばない。単なる私のイメージでしかないのだが、「酒場放浪記」に出て来るような店の店主というのは、あまり細かいことに頓着しない、そういう風に見えるのだ。それはそれでいい味が出てるのだから、そういう人に日本酒の薀蓄めいたことも語らせたくない。そうなるともう、時と場合に応じて両者をうまく使い分けてくしかないようだな。