風邪と酒
先日、何年かぶりに寝込むほどの風邪をひいた。幸い熱の方はわりとすぐに下がったのだが、その後しばらくはノドの腫れと咳が続いた。そんな折、とある蔵元からお酒のサンプルが届いたので、早速試飲してみた。ところがこれがひどい代物だった。これは毎年同じ時期に出される「季節限定酒」で、私も毎年必ず口にしているモノなので言ってみれば"定点観測"的な試飲である。だから毎年の違いがよく判るわけだが、今年のは例年に比べても飛び抜けて酷いと思った。しかしこの蔵のことをよく知る私には、これほど極端に味が落ちるとは信じられなかった。ところがそのサンプルの残りを今日試飲してみたところ、これが印象が全然違っていたのである。まあ、特別良いとは言わないまでも、ほぼ例年と同レベル、という感じだった。これでやっと解った、前回の試飲の時に不味く感じられたのは、直前にひいた風邪のせいだ。体調の悪い時に酒の味が違って感じられるというのは、よく知られた定説である。私もそれを知らなかったわけではないが、実際に今まで風邪をひいてる時に酒を飲むということをあまりしたことが無いので、気が付かなかったのだろう。ここまで顕著な違いがあるとは、正直思ってもみなかった。今回試飲した酒と、それを造った某蔵には、悪いことをした。昔から日本には「卵酒」で風邪を治すという"民間療法"まがいの風説があったり、「風邪なんか酒飲んで寝れば治る!」という精神論が跋扈したりしているものの、やはり風邪をひいたら酒は止めとけ、という意識が支配的だとは思う。私の妻なども、必ずそう言う。もちろんそれは、体を気遣っての発言なわけだが、私はこれをあえて酒の立場で読み替えてみた。風邪ひいてる時に飲む酒は本来の味じゃないから、それは酒に対して失礼だ!少なくとも味の良し悪しを判定するのなら、まずは己の体調を整えるべし!酒を売るプロとしての自戒を込めて.....。