女性専用車両
先日久し振りに地下鉄に乗ったのだが、ホームを歩いているタイミングですべり込んできた列車に何気なく乗り込んだところ、それは「女性専用車両」だった。気が付いたのは扉が閉まり、動き出してから数秒後。特に車内に違和感を感じたわけではないが、ふっと見ると「ここは女性専用車両です」という文句がそこかしこに掲示されている。表情には出さないが、「やっちまったぁ~!」と心の中で呟いた。私が日常利用する某私鉄にはそんなものが無いから、まったくノーマークだった、というのも言い訳にしかならず...というか言い訳などする機会もないが。とりあえずどうしよう...降りる駅は2駅先だ。最初に考えたのは次の駅で一旦降りて、スッと隣の車両に乗り移るということだが、しかし2駅分ならこのまま乗ってても別にいいじゃないか、と結局開き直った。そうはいっても根が小心者の私は、誰かから指摘されたらどうしよう、という心配もした。「あ、すいませ~ん、もうすぐ降りますので」と笑ってごまかそうか。しかしなんか謝るのも卑屈な感じがしてシャクだ。そもそも女性専用車両に乗ることは悪いことなのか?女性専用車両の本来の意義というのは、痴漢被害を未然に食い止めることだと考えられる。それ以上の意義はないはずだ。しかし私が乗ったのはお昼前で車内は空いていたから、とても痴漢行為が出来る状況ではない。そうすると本来の意義は失われるわけだ。そうなれば今度は別の疑問も湧いてきた。性別によって乗車できる人を制限するのは、明らかな差別ではないのか?そうだ、何か文句言われたら、この論法で対抗すればいいのだ!などとしょうもない考えているうちに列車は目的の駅に着いた。現実には私のことを咎めるどころか、奇異な目で見るような人もおらず、ドアが開くと私は何事もなかったような涼しい顔でホームに足を踏み出したのだった。