中学校の部活
中学校の部活(ここでは主に運動系の部活を念頭に置く)がいろんな意味で行き詰っているようだ。まず挙げられるが教員の負担増。部活は言うなれば実質「ボランティア」みたいなもので、どれだけ労力を費やしても自分の給料が上がるわけではない。それどころか逆に保護者からの突き上げやダメ出しを食らって苦しむケースもあるという。その一方で、生徒は必ず何らかの部活に属さなければいけない、と決められている学校も多い。例えば校外のクラブチームなどに所属していても、校内的には何らかのクラブに所属していなければいけないとされている。私の子供が通っていた中学校では、そういう子たちはみんななぜか卓球部に所属していたので、「腰かけ卓球部」と揶揄されたりもした。それはまあともかくとして、中学校の部活が曲がり角に来ているのは間違いない。私の個人的な考え方で言うと、「保護者が中学校の部活に過度に期待すること」、「中学校の部活で全国レベルでの好成績を期待すること」このふたつを止めてしまった方が良い。中学校の部活では、少しでも上を目指したいという“意識高い系”部員と、とりあえずそこまでガチな気持ちではない部員が混在していると思われる。本来この両者は分けて考えられるべきだが、現状そうはなっていない。ここでどちらを取るかは極めて重要だ。“ガチ系”を重視するのであれば、教師の負担は増えることになり、また“ノンガチ系”の生徒を置き去りにしてしまう。逆に“ノンガチ系”に合わせれば“ガチ系”としては物足りない。どちらに合わせても双方満足のいく結果にはならない。ここで私が考えるのは、中学校といういわば「公教育」の場で“ガチ系”の要望を満たす必要があるのか、ということだ。例えば現在中学生の多くがおカネを掛けて塾に通っている。これは来るべき高校受験に臨むに当たって、正規の授業だけでは物足りないと思うからこそそうするのだろう。それなら部活動においても、より上を目指す“ガチ系”の人たちは同じようにおカネを掛けてよりレベルの高いクラブチームのようなところに行ってもいいのではないか。あえて批判を承知で言えば、おカネを掛けずに高レベルの指導を望むというのは虫が良すぎるだろう。そして中学校の部活は、スポーツを「楽しむ」ことに特化した方が良い。もちろん自由参加だ。中学校の部活で決定的に欠けているのは、スポーツを「楽しむ」ことだと思う。しかし現状ではなんだか「苦行」になっているように思えてならない。しかもそれを美徳として美化しているフシがあるから始末が悪い。高齢者になってみればみんな分かることだが、スポーツって「楽しんでナンボ」。それが「スポーツ文化」というものだ。そういう意識を子どものうちに植え付けておいた方が良いと思うのだが、現状ではそうなってはいない。「いや若いうちは、困難に打ち勝って勝利を手にする喜びを味わわせてやるべきだ」という意見もあるだろう。それは分かる。でもその考え方には代償もあると思うのだ。あぶれてしまった子供は劣等感を抱き、場合によってはそのスポーツを嫌悪してしまう可能性もある。少なくとも公教育においてそういう事態になるのは好ましくない。スポーツを文化として老若男女が親しめるものにするには、ことこの日本にとっては考え方をガラっと変える必要があるかもしれない。そしてその第一歩が「中学校の部活」だと思うのだ。