ブックレビュー元AKB48「非選抜アイドル／仲谷明香」

元AKB48仲谷明香、この名前を聞いてまず思い浮かぶことは
声優選抜で声優の道へ進むため卒業した人。そしてあの前田敦子の
同級生で素人時代から友達同士ということ。

前田敦子が今や燦々と日光を浴びるヒマワリとなっている印象に比べ、
公園の隅の方にひっそり咲くすみれの花という印象を抱いてしまいます。

元々は二人とも目立たずに引っ込み思案なタイプだったそうなのです。
そんな似たもの同士の前田敦子が先にAKB48に加入して一花咲かせた
ことで、仲谷はAKBについて調べてみて、それがアイドルが最終目的
なのではなく、各自の夢を実現するための登竜門だと言うことを
知り、自らの声優という夢のために扉を叩くのです。

その幼少期の声優を目指し始めたきっかけから語られて、仲谷の
「ウサギになれないカメ」の半生が綴られていきます。

そんな仲谷が自らの長所と短所、適性と苦手、様々な面を自己分析
して困難に対して自分なりの、いや自分にはそれしかないという
対処法を見つけていき挑んでいく姿が描かれています。

まず仲谷明香は引っ込み思案でAKBの重要な仕事である握手会などで
人気を得るということが苦手なのです。そこで思案を巡らせて
自分に出来ることで自分の存在価値を見せていくのです。

自分が「非選抜」だということに徐々に居場所を見つけていく
仲谷は他のメンバーの振り付けや台詞を積極的に覚えていき
他にはいない「代役」というユーティリティプレイヤーという
地位を確立していきます。それこそ「非選抜」であり存在感ある
「脇役」という芸能界に欠かせない存在なのです。

ここまでご紹介した内容はこの著作の前半部分に過ぎません。
この後、その代役として認められたことで仲谷は高い評価を受け
声優としての仕事にもその世界は徐々に拡がっていきます。

非選抜メンバーから観たAKBの価値、魅力についても雄弁に語って
くれています。きっとお読みになると新たな発見もあるのでは
ないかと思います。

この本は多くの英雄の周りにいる一般人に過ぎない人々への
励ましとなることでしょう。

私もかつて詩に（「太陽」という作品）書いたのですが、
クラスメイトがサッカー部主将で県大会で優勝してＪリーガーに
なり天皇杯で優勝したということがあり、自分は脇役だという
引け目を感じていました。

そんな気持ちに「非選抜の楽しさ」と、選抜が輝けるのは
大勢の非選抜がいるお陰なのだという事実を教えてくれて
希望の光を照らしてくれた貴重な一冊がこの著作だったのです。

文章もとても読みやすく、ケータイ小説の中で上位の部類にある
作家さんくらいの文章力があると思います。一流作家さんや
学者さんの本みたいに文章の表現に余計な工夫が施されていない
ので苦痛なく読み進められて、気持ちよく読み終えられること
でしょう。オススメの一冊なのです。

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