「うーうん、葵子は悪くなかと
たまたまボールばシュートした葵子は運の悪かっただけやし
そのゴールから外れたボールの行き先におったあたしも運が悪かっただけやけん」

「うん、ほんとにごめん、蘭子がそげんふうに言うてくれるけん
女子サッカー部でも問題にされんやったけん、本当にありがとう」

「謝らんで良かし、お礼も言わんでよかとよ」

そこへお店のお婆さんがソフトクリームを持ってきて二人に手渡して
雰囲気を察してかそそくさと店の奥へと引っ込んでいった。
蘭子も葵子もうつむいて深刻な顔をしていたのだ。

「陸上部に戻らんと？」

「うっうっ」
すると蘭子は泣き始めて号泣へと変容していったのだ。

葵子もしどろもどろに泣きながら蘭子をなだめた。
「ごめん、事情はわかっとうけん、もう言わんけんね？泣かんで？」

その事情はこんな風だった。
女子サッカー部の期待のフォワード葵子がそのシュート練習で蹴った
球にたまたま陸上部の練習でグラウンドにいた蘭子の頭に命中し
蘭子は当たり所が悪くて右目が網膜剥離になってしまい網膜の
再建手術を受けてしばらくの間運動禁止となって休部していたのだ。

「ねっ、もう言わんけん、ソフトクリームば食べよう？」

「うん」

二人は仲良く並んでソフトクリームを食べていた。その様子は
仲のいいカップルに見えたことだろう。

するとフラッシュがたかれた。

「ごめんなー、撮らしてもらったけん、いい絵が撮れたばい」

一眼レフのデジタルカメラで二人を撮影したのは男子校に通う
葵子の兄の葦原栞志（あしはらかんじ）で、栞志は写真部の部長をしていた。
長身でイケメンなのだが残念なヲタ丸出しの栞志は逃げるように走って
去っていった。

葵子は両手で蘭子へ拝むような仕草をした。
「ごめんね、実はソフトクリームデートの写真ば撮りたかって
兄ちゃんに頼まれたと。相手は蘭子がどうしてもよかって
しつこく頼むけん。ほんとにごめん」

「そんなあ、泣いてるしめっちゃ恥ずいよー」

TO BE CONTINUED