どん!どん!どん!どん!どん!どん!・・・・・
胸に鈍く重い衝撃が走る。瞬間的に目は開けたものの数秒ほどは自分の身に何が起っているのか?全く理解できない状態でいた。だけどこれだけはハッキリと理解していた。自分の胸の上にババアが乗っていることを。
俺はそのババアを凝視していた。一瞬、ババアはどんどん!と言う動作を中断し俺の胸に馬乗りで座ったまま俺をじーっと見下ろした。その時ばかりは俺の背筋にも冷たい何かが走りその後体全体が高揚した。この頃、自分の身に起きていることの異常さが十分理解でき、当然、俺は布団から抜け出そうとした。が、...体が動かない!金縛りって奴か?声も出ない!俺は十分過ぎるほどパニック状態になりながらも体中のあっちこっちを動かそうとした。手も足も指だけはテキパキと動く。だが、それ以外の部分は動かない。元々、攻撃的な俺はパニック状態からさめて相手の観察をはじめていた。ババアは白装束、手には数珠らしき物をは巻いている。数珠を持った両手を顔の前で合わせ、がなりたてるほどの大声で呪文か?御経か?俺には解らんがそのようなことを発しており、両手を頭上に振り上げる度に尻がどん!と俺の胸を突く。しかし、何故だろうか?この頃、ババアの顔がぼやけて見えづらい。
時間にして15分位この状態が続いように思えるが随分と長く感じた。はじめはジタバタした俺も後半は気持ちに余裕ができババアを観察後に平常心で自分の体のあちこちを動かすことに勤め、ババアの雄叫びを耳と胸に感じながら、体の始動に集中していた。
突然、ババアの声と俺の胸を撃ちつける尻の衝撃が薄らいだかと思ったら、金縛りが解けて体に自由が戻った。その時、静まり返った自分の部屋に耳を澄ませた。何かが聞える。どこから聞えるのだろう。俺の足元右側斜め後方5メートル位か??どうも女性数人がぺちゃぺちゃと雑談しているように聞えるが、話している内容は不明だ。しかし、さっきまでのババアの時とは全く雰囲気が違う、とにかく幸せそうな、笑い声交じりの明るい会話のように感じられる。俺は話し声をする方向を見ようとして頭を持ち上げた。眩しい!、何なんだろうこの眩しさは!真っ白な光が俺の目に飛びこんできた。あまりの不思議さに眩しいその光の方向をみつめようとしたら、スーーーーとゆっくりだが光が薄らいで行く。女たちの会話と思える声が聞えなくなった時、チュンチュン・・チュンチュン・・・と雀の囀りのような声が聞えてきて、直ぐにその泣き声も聞えなくなった。
俺は起き上がり、今まで声が聞えていた場所を確認するためベランダ側のカーテンを開けた。ちなみに、俺の部屋は4階建ての4階にあり、聞えていた声は5階とか6階とか、少なくとも俺の部屋よりも上の方にあった。
カーテンを開けて気付いたのだが、部屋の電気をつけっぱなしで寝てしまったためか部屋は明るかったし、雀の鳴き声が聞えたこともあったので俺は朝の7時頃かと思い込んでいた。しかし、カーテンを開けたら外は真っ暗。時計とみたら夜中の3時だ。
『さっきまで俺は何を見て、聞いていたんだろう』
これは創り話しではありません。実際においらが高校生の時(今から26年前)に体験したことです。
おいらは、信じる宗教など持っていませんし、あの世や怪奇話しには興味ありません。
しかし、だからこそ、この自分で経験したことだけが否定できないんでいつまでも忘れられないんです。誰か、この体験を科学的に説明できますか?御便りお待ちしています。
蛇足ですが、『ゴースト』って映画ありますよね。映画の中で主人公が天国に迎えられるシーンがあるじゃないですか。その時の眩しいシーンが、おいらが眩しく見えたあの光景に似ているですよ。そう考えると、あの女性達の雑談は、天国の住人達の声だったのか?とか思えたりしてね。それと、ババアなんだけど、おいらのばあちゃんだったりしてね、そんでもって守ってくれていたりとか・・・
二十歳の頃、生き別れていた親父と再会する機会があってさ。そん時に、『お前の先祖は、埼玉の秩父○○駅前にある(あった?)寺の坊さんだ』親父が言っていたことを何故か思い出すぜ・・・☆